第5話

「で、結局これかよ……」

「綱引きってさー、チーム競技じゃないの?」


はい、現在の状況ですが……

何故か俺とロクの2人だけ綱を持っている状況です。

いや、何でよ?!

綱引きでしょうが!?

他のみんなは?!


「んー、まぁ。SSSランクの力を見たいってやつだな。本気を出してもらうなら一般人は近寄らないようにしないとな」

「加勢川さん!そんな理由ですか?!いや、本気なんて地上じゃそこまでですからね?!」

「はっはっは。田島は人気者だからなー。町内会からも『祭りの時に本気出してもらってないから広い場所で1度は見てみたい』って連絡もらってな。ほら」

「……わぁ、父兄席がいっぱいだー」


気づいたら父兄席以外にも色んなところから見ている人が。

小学校に生徒がいない人達も来てますね、これ。

あ、うちの町内会長の万福寺さんも来てる!

……そういえば町内会の祭りの時に綱引きあったけどかるーく握ったらビクともしなくてツッコミ貰ったんだった……


「えーっと、じゃああーさんと私で綱引きをやるってことで?」

「そんな感じだなー。仕方ない、いっちょやるかー」

「うへぇ、まじー?あーさんで力じゃ勝てないってー」

「そう言いながらストレッチ念入りにしてんじゃん。てか、背筋ならお前の方が強くね?ドラゴン角で持ち上げて投げてなかったか?」

「そりゃダンジョンの中でかつ本来の姿ならそのくらい朝飯前だっての!けど地上で人型だよー?無理無理カタツムリー」

「……しれっとネットミーム覚えてんじゃないよ」


『さぁ、世紀の一戦!赤組さん白組さん……いや、田島さん、ロクスさん、頑張ってください』


放送委員の声がグラウンドに響く。

俺とロクは指定された位置に移動する。

下にある極太の綱を身体に巻いて準備完了。

開始の合図は学校の先生が務めます。


「では、始めまーす……セット」

「ふん!」

「せい!」


俺とロクが力を込める。

ピンッと綱が引っ張られて持ち上がる。

ウゴゴ……今の時点で力強いな。

さすが神獣、人間の姿でもマジやん。


「……始め!」

「はっ!」

「よっ!」


ビシッ!!!


綱が聞いたことの無い音を立てて引っ張られる。

う、予想通り、初動はなんて力だ!

俺が力を入れてもビクともしない。

まるで大樹に結ばれた綱を引っ張っているようだ。

よく見ると地面がめり込んでいる……

こいつ、さては地面に魔力を流してセメントみたいに固くしてね?

なんという策士……!

これは、もう少し練らないと厳しいかも……!

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