目的

「OK.じゃあ次行ってみよう!あれをくれ」


 またもやあれをくれで通じてしまう。スタッフはこくんと頷いて別の黒いリモコンを手渡した。


 こちらにリモコンを向けると、ガチャコンと拘束具が外れた。


 思ったよりも解放が早い。


 頭を動かし、手をグーにしてパーにして体の動きを確かめる。手のつま先まで鋼であった。私の人間であった感覚はなんなのだろう。この体をどこかおかしいと感じているのはどうしてだろう。


「よし、いいね、慣れてきているようだ。解放の次は、飛行テストだ。」


 飛行?


 またもや、意外な言葉が飛び出した。


 恐怖、痛さ、硬さ、飛行。


 この体は、人が自立飛行するために作られた飛行ユニット?


 この研究を人間に応用することで人間自体が飛べるようにするということだろうか。


 

「なんだ?記憶、残ってるよね?君は空を飛ぶぞ?」


「ええ、わかってるわ」


 いや、わかってない。


 私が飛ぶ?冗談じゃない。


 だって……


 だってなんだ?飛ぶと聞いて何か震えた気がする。なぜ嫌なのかが思い出せない。


 睨まれているのに気がついた。


「なんでしょう」


「んーん?私の名前は?」


 知るかーーーーー!

 えーーい適当に言ってしまえ!


「ジョンさんです。」


 ジョンであってください。


「うん違うね。まぁまぁそう焦るな。そうかーー記憶無くしちゃったか。落ち着いて聞いてくれよー。何から話そうか。」


 戦闘の構えをすると、焦るなと手のひらを下、下として落ち着けとしてくる。


「今この状況が、私にとって不利な状況でないと説明してください。」


 私は、冷静に問いただした。廃棄されるわけではないとわかっているから、私が壊れてしまえば、この者たちの研究は振り出しに戻るからだ。


「OK.君は人間と機械AIのハーフだ。交配したという意味ではなく、人間の心と機械AIが同時に脳に組み込まれていると言う状態だ。ではなぜ、恐怖、痛さ、硬さを確認しているのか、それは人間自体が空を飛ぶということを達成させようとしているからだ。人間は、飛ぶということに対してある程度の恐怖が組み込まれていると言っていい。なぜなら、人は飛んだら重力に逆らえずに落下して死んでしまうからだ。次に痛さ、もし万が一、落下した時痛みがあれば、もう一度飛ぼうとは思わないだろう。三つ目の硬さは、珍しいものが飛んでいれば今じゃ撃ち落とされるかもしれないという状況だ、壊れない硬さがいる。そして最後、ならばなぜ人間の心が組み込まれているか。それはその人間の心になったベースの人物が飛びたいと思いながら死んでしまったからだよ。私はその人のお母さんに頼まれたのだよ、飛ばせて欲しいって。」

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