私の体

けんぴ

私の体

 人間じゃない!


 私は目覚めた。


 何かで手足を拘束されているみたいだ。


 手は後ろ、足は下で黒色の拘束具のようなもので拘束されている。


 人間じゃないと思ったのは、目覚めた時に私の首が垂れて、つま先を見つめた時に気がついたのだ。いつもの私の体ではないと。


 可愛いピンクのフットネイルも、素肌色も失われた鋼色だった。


 泣きそうになるが、それはただの心の記憶だったらしい。


 表情は一つも動かない。


 目の前には透明ガラス越しにパジャマ姿で居座る髭面の男性外国人が一人いた。


 色は深い青色。多分色表記はネイビーだ。


 外国語のようで何を話しているかはわからない。


 でも状況から察するに、奴が私を変えたのだろうということは予想がつく。


 周りにいる人は、日本人だが、会話はスムーズだ。


 途中から会話の端っこを聞き取れるようになってきた。


 薄い壁だな。


 まぁ笑うところではない。


 ちなみに日本人の方は白衣を着ている。パジャマじゃないんか。

 いや、逆か。奴はなぜパジャマなんだ。


「言語パッケージインストール完了しました。」


 日本人スタッフが外国人に状況を伝えた。


「OK.感度は良好か?」


 日本人スタッフがこくんと頷いた。


「OK.フーカどういう状況かわかるかい?」


 こちらに話しかけてきた。

 だんだん聞き取れるようになったのは、言語を脳に入れたからか。

 私は無視した。

 きっとこれは実験だ。

 状況を言うよりもきっと冷静になった方がいい。

 ここは相手の出方を待つ。


「あれをくれ」


 またもやスタッフはこくんと頷いて、何かリモコンのようなものを持ち出すとそれを渡した。

 それをこちらに向けてピッとボタンを押した。


「グッッ」


 少しピリッとした。電流だろうか。

 

「私に、嗜虐の趣味はないんだ。答えてくれないか?」


 嘘はない。きっと大義があるのだろう。私を奴隷としてではなく今後も観察対象として丁重に扱うだろう。


 なら、この反応で何を見ている?痛さ、恐怖、体の硬さだろうか。そして私の名前はフーカ。


 記憶はあるという程で進まれている?


 それで行こう。


「うん、恐怖はないみたい。痛さもそこまでないけど、こういう時記憶って邪魔じゃない?」


 記憶が邪魔という理由は、戦闘ロボットとしての活用であったりする。


「まぁな。だが、記憶まで消してしまったら、今までの信頼関係がパーになっちまう。それは避けたい。ある日起こしたら、適性生物と勘違いして殺してしまいましたじゃあ洒落にならんからな。」


 手をパーにしたり、笑ったりおどけて見せている。


「確かにそうですね。」


 今の私の表情がわからない。この先、それだけが気がかりだ。


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