第6話

「現代の人たちの中に、かなりの強さのストレスを受けるとこのような現象を起こす人が居るんです。それを、まぁ捻りもないですが『超能力者』や、『能力者』って言うんです」

 飛家は、本物の名刺を差し出して話し始めた。

 二人が最初に出した名刺はダミーで、実際は「能力者」と呼ばれる人のサポートや対処をする仕事をしているのだ。蓬友会は、二人が所属している事務所運営の団体に当たる。実際に縁明が作ったぬいぐるみは、絮雪と要を心配するように二人の周りを動き回っている。

「絮雪さんの話を聞いて、もしかしたらそうかもって仁科先生から聞いていて。それでうちで保護できないかなぁと思って来たんです」

 仁科は笑いながらピースサインをしている。

「仁科先生もグルだったんですか……」

「グル、というか私も非常勤で勤務しているからね。私から相談させてもらったの」

 要と絮雪は顔を見合わせた。

「本当なら保護者の人が必要だけれど……絮雪さんは保護者の方と連絡つかなさそうですし、まずは児童相談所からですかね」

「そうね。それから、杖木くんは保護者と連絡つくのなら、保護者さんと一度お話させてほしいわ」

 要は驚いた。自分も保護の対象になると思っていなかったからである。

 それを察した飛家は、優しく笑いながら答える。

「私もそうなのだけど、こういった能力者に関係している一般人も、一部は保護の対象なんです。要くんは絮雪さんが心配だから、それ抜きにしてもうちに来るのかなぁって思って」

 飛家は手帳に書いた「これからやること」というページをちぎって、ベッドの机に置いた。この先は、飛家と縁明の本業になる。二人にどのようなことをするのか、どのようなサポートを提供できるのか。それらを細々と説明していく。

「私たちは、強いストレスや怒り、悲しみで不思議な現象を起こしてしまうの。だから、それをコントロールできるようにすること。そして、もちろん心の傷のケアをすること。これが、蓬友会でできることよ」

 そう言って、縁明は絮雪と要に向き直る。

「良かったら、私たちでサポートさせてくれないかしら」

 絮雪は外を見た。雪はのんびりと降り、先ほどのような厳しい雰囲気はない。絮雪は穏やかな気持ちで、自然に「よろしくおねがいします」と言えた。

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やなぎのはな 野鴨 なえこ @nae-ko087

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