第5話 最初の恐怖

その中に入ると、あの時見ていた生徒さん達の姿を思い出して、その時の気持ちを思い出して、やはり、泣けて仕方なかった。

ここに座って、外泊できない週末に、涙をいっぱいためていた生徒さんもいた。

“ ここに縛り付けられている。” と思って、外から見ていただけの自分が、今、この中にいる。

でも、決して自分にとっては、縛り付けられるって感じはなくて、ただ単に、なんか怖い。自分を守ってくれる、心強い存在なんだ。と思う反面、こわい。

そこで出された昼食を見て、「あ、パンだ、パンなら食べられそうな気がする。」と、お盆の前に座れた。

「あ、チョコスプレッドが付いてる、おいしそう。」

食べられそう、でも心細い。でも嬉しい。色んな思いで、めそめそ泣いた。

泣きながら、ビニールの幌の下で、パンを一個だけ、甘いチョコつけて、おいしくいただいた。



20年程前、院内学級で


お仕事をさせてもらって


いました。


私が今回得た病と同じ様に、


小児がんと診断され、


長期の入院を余儀なく


された生徒さん達と、


病棟で、授業を通して接する


日々を、数年間過ごしました。


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