一章 八節 迷いの樹海を払え
街を出て1時間ほど経っただろうか。
確かにあのラーミアとかいう商人が言う通りここの足場は最悪だ。
木の根っこが地形にデコボコの高低差を生み、地面はドロドロの土壌だ。
しかもほとんど道がないから行くべき場所が何も分からない。
謎の霧も出ている影響で、どこにいるのかすらあやふやだ。地図ってのは不便なことに、自分がどこにいるか分からないと使えない。
まずい、まずいとやや焦りを覚えていると、目の前に何かが見えた。
、、、どうやら、城下町の入口に戻ってきてしまったようだ。まさかの事態に絶望を覚え、後ろからはとても痛い視線が走る
「、、、ねえ君、何してるのさ」
トゥセの言葉が思い切りナイフになって刺さる
「ちゃんと印をつけていこう」
だがバカなことをしている自覚はある。即興で思いついた解決策を自分でのべ、実行に移す。
地図と地面にそれぞれ印をつけ、ちゃんと目的地に進んでいく。
「最初からそのくらいの知恵を働かせてくれると助かるんだけどね」
トゥセは呆れてそう言う捨てた。
しばらくちゃんと進めており、安堵した頃だった。
カサリ、と音がした
樹海に入ってから何度かあったことで、慣れっこだ。
3人でそれぞれ武器を構え、来るべき襲撃に備える。
カサリ、カサリ
そして、カサリ
戦いはまたここにもあった。
敵は三体、ツタツの亜種と思われる、直接触れると痺れるマツタツ、巨大で獰猛な亀のカメガ、ワルムが成長し毒をもったオオワルム。
さっさと倒さないと痺れや毒が厄介だ。
めんどくさいことになる前に短期決戦で仕留めるのがいいだろう。
トゥセはいつも通り一番早く動き、オオワルムを狙う。新しい武器は良く馴染んでいるようで、切れ味の良いナイフを二回振り、すぐにバックステップで引く。
「はい次!兄さん頼んだ!」
「わかってる」
とトゥセとオブゼが掛け声と一緒に入れ替わりオブゼが前線に出て攻撃をする。
柄の両端に刃のついた珍しい槍を自分の体を軸にして回転させ、勢い良くマツタツとオオワルムにそれぞれ3回斬りつけ、それでオオワルムは霧となり、マツタツは瀕死にまで追い詰められた。
しかし、敵もそれで終わるだけじゃないようで、マツタツは自分に向かってその体を鞭のようにしならせ攻撃してきた。
急いでマントで防ごうとするが、腕に攻撃がヒットし、体に痺れが走る。
こうなってしまうとまともに体が動かない。
口は動かせるため魔法なら使用できるが、武器で攻撃しようとしてもおぼつかずに当たらないのがオチだ。
「ブルトス!!!」
苦し紛れにそう唱える。
闇の呪文であるブルスの全体化魔法
何度かブルスを使っているうちにコツを掴み、習得に至った。
相手のカメガは氷属性に耐性があるのは知っていた。
ならばせめてこれがいいだろうと思いこれで攻撃してみる。
マツタツはこれで霧になり、残るはカメガだけだ。
しかしカメガも反撃してきて、その硬い甲羅で体当たりを仕掛けてくる。
もろにそれを食らってしまい、痛みが走る。
しかしカメガは体当たりの反動で一瞬よろめき、その隙をトゥセは逃さずにカメガの首元をナイフで掻っ切り、とどめを刺した。
戦いが終わっても痺れている中、オブゼがモゴモゴと何かをつぶやくと、体からスーッと痺れが引いた。
「今、何の魔法を?」
「、、、クティオ。」
「ありがとう」
「礼には及ばない」
彼もそれ以降まただんまりだ。
いくらなんでも冷たすぎないか、と思いつつも彼にとってはこのくらいが普通なのだろう。
そう思って割り切り、また樹海を進む。
樹海にだって魔物は多い。
この足場の悪い中で戦うのは地味に相当な苦痛で、足をくじいたり武器が木につっかえたりかなり戦い辛い。これまでの中で一番苦戦している自覚がある。
足が棒になるまでこの足場の悪いところを歩き、やっと半分くらい来た。
今日はもう遅いし、早く寝ようと思い、辺りをかき分け寝床を作りその日は眠りついた。
翌日も同じように先へ進む。
戦った後に方向が分からなくなったり、とにかく迷いに迷った。
しかしそれでも何とか基地にたどり着いた。さすがに入り口には兵も見張っており、迂闊に侵入はできないだろう。
基地は長い塔のような形状で、推測が正しければ最上階にここの幹部やらなんかがいるはずだ。
つまり、ここの塔を登りきらないといけない。
このとんでもなく高い塔を。
とにかく広く複雑な樹海のせいで体力の消耗が激しく、ひとまず休まないとろくに戦えそうにない。
全員それは同じようで、みんなして基地から少し離れた場所に寝床を用意して眠りにつく。
眠りにつき、戦いに備える
戦いのために眠るなんて、戦争でもしているような気分だ。
実際、これは戦争なのかもしれない。なんせ、これは魔王と勇者の戦い。そうだとしても、何もおかしなことはない。
そんなことを考えながら、意識が遠のいていった。
責業の旅 焼き鳥 @reamia2114
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