一章 七節 羽の舞う商人
翌日、宿を出てもう一度城へ向かった。
城の門番は また? って感じのリアクションをされて、中に案内してもらった。
デミラとオブゼもそんな感じだ。
不思議がるというより、あきれたような、そんな感じ。
ともかく、前回と同じように一般兵を部屋から出ていかせ、ゆっくり口を開いた
「、、、それで、何の用?テスター君」
「魔王軍の基地がどこにあるのか教えて欲しい」
「!!、、、なるほどね、、、いいよ。魔王軍の基地は、この城下町の西にある樹海の奥だ。今は門を塞いであるけど、、、後で門番には伝えておくよ。君が通るってね。」
「分かった、行ってくる。」
「ハハ、君あんまり急ぎすぎないほうがいいよ?若いエネルギーがあるのは羨ましいけどね。、、、オブゼ、同行しなさい。」
「、、、しかし、、、」
「弟が危ない旅に出るのについていかなくていいのかい?、、、君はそれに耐えられるほどおおらかな人じゃないだろう?」
「、、、ありがとうございます。」
「ま、そういうこと。行ってきなさい。あ、そうそう、旅の準備は私の知り合いの店でするといいよ。[何でも]売ってるよ。地図はあるかい?印をつけよう」
自分が彼に地図を手渡すと、万年筆で軽く、小さな丸を書く。
「はい、どうぞ。、、、健闘を祈るよ。頑張って」
デミラはそういって自分たちに向かうよう促し、自分たちは城を出た。
トゥセはほんの少し、笑顔だった。
オブゼと手をつないで歩いている様子は、昔と変わらなかったし、懐かしい気分だ。
「よろしくね、兄さん」
「、、、任せろ」
オブゼも安心したような顔つきだ。
顔が変わってない、というのは言わない約束だが。
デミラが言っていた店に早速向かうことにする。
城下町の端の方にある、ひっそりとした店だった。
ドアを開けると、チリン、とベルの音が鳴り、つがいが年季の入った音を出す。
「よう、見ない顔だな。いらっしゃい」
カウンターの奥の椅子に座り突っ伏していた店員はこちらを向いて、そんなふうに挨拶してきた。
「、、、いや、久しぶりだったな。オブゼ。それにトゥセも。、、、お前ははじめましてだな。俺はラーミアっていうんだ。よろしくな。」
「、、、それで、何の用だ?何でも売ってやるし、素材なら買ってやる。もしおしゃべりしたいなら付き合ってやるさ。」
「それじゃ、これを買い取ってくれ」
そう言って自分は素材が入った袋をトン、とカウンターの上に置く。
あいよ、と返事をした後、袋の中身を一個づつ確認し、しばらく勘定していたのか黙り、その後貨幣を取り出し渡してくる
「合計504アウルム。まいどあり。」
金貨1枚と銅貨四枚を渡してくる。
しばらく考えた後、彼に話しかける
「何かおすすめの商品はあるか?これから旅に出るんだ」
「、、、そしたらこいつらがおすすめだな。装備類が欲しいんだろ?」
そう言って彼はテーブルの上に鉄製の片手剣、絹のマント、シルバーダガー、絹のスカーフを置いた。
「全部合わせて250アウルム。どうする?」
「買おう」
「へへ、、、まいどあり。」
一通り必要な売買は思わった。情報収集の一環としてついでに話すことにしようと思い、話しかけてみる
「トゥセとは、知り合い?」
「ああ、ちょっとした中で仲でな。オブゼとは今でも良く会うぜ。仕事終わりにな。」
「仲が良さそうだ」
「へへ、、、どうなんだろうな。向こうがそう思ってくれてるといいんだけど。」
そういえば、先ほどから何か美味しそうな匂いがする。聞いてみよう
「何か、食べ物も売っているのか?」
「、、、wow、初来店で気づいたお客さんは久々だよ。そうさ、俺のサンドイッチを売ってるんだ。買ってくか?」
携帯食料はありがたい。買っていこう
「それじゃあ、6個くれ」
「はいよ、24アウルム。まいどあり。」
丸いパンの形をした珍しいサンドイッチだ
「へへ、珍しいか?''サン''ドイッチってやつだ。」
、、、太陽のように丸い、って言いたいのだろうか。
くだらないな、と思いつつ、少し面白かった
「樹海はどんな場所だ?」
「あー、そうだな。結局ぬかるんでるぜ。足場が悪いから転ばないように気をつけろよ。、、、後は、とにかく道が分かりづらい、迷子にならないように細心の注意をはらうことをオススメするぜ」
「なるほど、ありがとう。」
「他に話したいことでもあるかい?客が来なくて暇だからな、付き合ってやるさ」
「いや、もう大丈夫だ。ありがとう」
「ああ、気を付けて行ってこいよ、勇者様。帰りを待ってるぜ」
「ああ、行ってくる」
そう言って自分たちは店の外へ出た
後は、出発するだけだ。
決意を固め、街を出る。
、、、時に、彼はいつ自分が勇者であることを知ったのだろう?
まだ、あの怪しい部屋にいる男にしか知られてないはずだ
、、、いや、クルレアも知っていたっけか
わからない、けど、進まなきゃいけない
勇者として、やるべきことをするだけだ
あの契りを交わした限り
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