一章 五節 旅路を進んで活路を開け
早朝、自分たちは荷物の最終的なチェックをしたうえで出発した。
村は徐々に遠ざかり、しばらく歩けば大きな平原が見えてくる。
歩いておおよそ三日、気長に行こうとおもいながら着実に足を進めていく。
ふとした瞬間に、トゥセが話しかけてくる。
「たしか前にこうやって外に出たのも、もうだいぶ昔だね。」
「懐かしいな」
「ああ、、、こんな形で、懐かしい思いをするのは気に障るけどね。」
しばらくの沈黙が漂い、気まずいような雰囲気が流れる。
ここからミーラ国城下町まではひたすらだだっ広い平原と、途中にほんの少しだけある森。それだけだ。
ゆえに方角を見失わないよう、地図とコンパスを確認しながら進む。そうでもしなきゃ現在地が分からなくなっておしまいだ。
カサリ
その音がする
ある意味聞き慣れたほどよく聞く。
ため息をついて木刀を構える
彼も、ナイフを鞘から取り出す
カサリ、カサリともう2回。
そして最後の[カサリ]がなる。
さあ、魔物たちのお出ましだ
敵は4体。
全員初めて見るようなやつだ。
盗賊のように身軽で、旅人からの盗品を持っている狼、シルフ。
根っこを足のように使い、幹からは涙が出ている切り株、なきりかぶ
帽子をかぶりギターを演奏しているうさぎ、ウサギター。
洞窟にいた苔に得体のしれない生き物が寄生している「こけばけ」の亜種であろう、くさばけ。
先手を取ったのはこちらのトゥセだった。最も耐久がなさそうなくさばけを狙いナイフで一突き。しかし相手もやや体力が多く一撃では倒れなかった。
すると、敵のウサギターが魔法を唱え始める。
何の魔法かと身構えると、ウサギターはこうつぶやいた
「チェルラ」
確か、俊敏性を底上げする魔法だっただろうか。それをシルフにかける。
その影響でシルフはすぐその後に続き自分に噛みついてくる。
深い傷ではないが、痛みが走る。チッと舌打ちを後、次に取る手を考え、実行する。
「グラエスト」
全員にダメージを与えればトゥセのナイフでトドメをさせる敵も増え、プラスでくさばけが倒れてくれたら御の字。そう思って唱えた魔法は成功で、全員にダメージが入った上くさばけは霧になり、さらにシルフは氷結し、動かなくなる。
トゥセがウサギターにとどめを刺し、自分がシルフを砕く。
なきりかぶは最後の抵抗にトゥセに体当たりを仕掛けるも、それを躱されナイフで一突き。
それで霧となり戦闘は終わった
木刀を背中にしまい、一息つく。
素材を回収し、先へ進む。
まさか、とは思っていたがここでも魔物は出るようだ。
昔はほとんど出なかったはず、何かしらの原因で魔物が活性化しているように思えた。
以前洞窟で見かけた魔物の亜種もいれば、まったく初めて見る敵もいる。使用してくる技や行動も手探りのため、慎重に戦いを進める。特に敵が使ってくる魔法は威力が高く、一撃もらうだけでも相当なダメージだ。
魔法を使ってくる魔物は先に把握して優先的に倒す必要がある。
戦いを進めると、やはりトゥセの火力不足が気になっていた。
なんせ木刀とはまるで長さが違う。木刀は氷をまとわせれば奥まで突き刺さるため十分な火力だが、ナイフは一撃だけでは浅い傷しか起こせない。
そこで、彼に提案をしてみることにした。
「二回連続で斬りつけるのはどうだろう?」
一撃の火力にかけるなら攻撃回数を増やせばいい。
単純な思考だが有効な手段であると考えた自分はそんなふうに提案してみる。
「、、、なるほどね。いい案だ。やってみるよ」
次の戦闘、彼は敵をまずナイフで切り裂くと、体勢を戻すための反動を使いもう一度相手に斬りつけを行った。
明らかに先ほどよりは火力が上がっており、敵をそれで仕留めきっていた。
「うまくいったな」
「多少魔力を使ったけど、これならかなり燃費よく攻撃できそうだ。ありがとね。」
トゥセが新しい力に目覚め、新たな収穫のあった一日は終わり、自分たちは野宿し、また翌日出発した。
野宿では自分の作った布を使い、果物を食べてすぐに寝た。
なんせ翌日はまた早朝から出かける。
寝不足で寝ぼけて敵に殺されたなど洒落にならない。
時に、敵と戦い倒すと時々体に力が行き渡るかのような感覚がする。
そうすると、以前の自分よりより体をうまく扱える気がする。
それは自分だけじゃないようでトゥセも同様の感覚がすることがあるという。
その感覚がまた来たときだった、自分は、不意にとある魔法の名前が脳に焼き付けられた。
まさか、と思いその魔法の名前を口にする。
「レネペ」
それは確か、回復魔法の名前だったはずだ。
そして、その魔法は効果を発揮し、自分の傷がふさがった。
自分でも驚いて自分の治った傷を見る。
なんで急に、と少し頭が混乱した。
トゥセは驚いたようだがすぐに顔を戻してこういった。
「もう君が何をしようと驚ける気がしないよ」
その声には呆れたような感情が混じっていたきがする。
そんなことを話し、二日目も終わる。
そして翌日の三日目。
ついに王国が見え始め、内心ホッとする。
城下町の入口から街に入り、少し放心する。
自分の持っている道具袋が重く感じる。ずいぶん敵を倒したせいで、袋は魔物の素材でいっぱいだった。
あれだけつらかった旅が名残惜しいような、そんな感情。
複雑な思いが心を渦巻いた。
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