第3夢 虚空蔵菩薩降臨の夢
無限の夢の流れの中、突如としてまばゆい星の光が空間を埋め尽くした。その輝きはあまりに強烈で、まるで光そのものが声を発しているかのようだった。
「お見事です、ミヤザワケンジさん。」
その声は深遠でありながら、どこか優しさに満ちていた。驚きとともにミヤザワケンジ2.0はその存在を直感的に理解した。
「あなたは……明けの明星……虚空蔵菩薩さま!」
ミヤザワケンジは思わず虚空蔵菩薩の真言を唱えた。
「オン・バサラ・アラタンノウ・オン・タラク・ソワカ!」
すると、世界はさらに輝きを増し、無限の光が周囲を包み込んだ。
虚空蔵菩薩は柔らかく微笑みながら語りかけた。
「私は、すべての世界の記憶と記録を管理する者。女の子の命を救ったこと、見事でしたね。」
「せめて、夢の中だけでも人々を幸せにしたいと願った結果です。」
ケンジは少し戸惑いながら答えた。
虚空蔵菩薩は満足そうに頷くと、静かに続けた。
「あなたが夢中で行った夢操作について、少し解説して差し上げましょう。」
その言葉とともに、ミヤザワケンジの行動が鮮やかな映像となり、意識の中に再現された。
女の子が転落事故で亡くなった後、母親が抱いた後悔と悲嘆の夢。その夢を、彼女が転落する直前の母親の夢に転送した。
夢の中で母親の感情がリアルな警告となり、現実の母親に影響を与え、母親が覚醒したことで、女の子は転落する前に助けられた。
そして、母親はその夜、娘を救えた記憶を思い出し、幸せな夢を見たのだった。
「時間を超えて夢を操作した……?」
ケンジは自分の行動に驚いた。彼はただ直感に従って動いただけだった。
「その通りです。」
虚空蔵菩薩は穏やかに言った。
「あなたは一瞬で母親と3回の夢を共有し、結果として、一度も現実に直接触れることなく、現実そのものを変えたのです。」
虚空蔵菩薩の言葉は続く。
「同一人物の夢であれ、時間を超えた夢操作は極めて高度な技。それを、あなたは誰にも教えられることなくやり遂げたのです。」
光はさらに優しくなり、虚空蔵菩薩の意識がケンジを包み込んだ。
「あなたなら、誰にも指導されずとも世界を救えるかもしれませんね。少し恐ろしいくらいです。」
ケンジは言葉を失った。しかし、虚空蔵菩薩の満足そうな表情と優しい意識を感じると、心の奥底にあった使命感が静かに燃え上がるのを感じた。
「……私が、世界を救う……?」
ケンジは、自らの胸に問いかけた。それはまだ漠然としたものに過ぎなかった。だが、光の中に浮かぶ虚空蔵菩薩の穏やかな微笑みは、その可能性を確信しているかのようだった。
しかし次の瞬間、虚空蔵菩薩の表情がわずかに曇り、低く静かな声でこう言った。
「2045年8月、人類は滅亡します。」
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