第12話 真実の行方

夜の街を駆け抜ける車の中、ジウンはチェが運転する横でUSBメモリを握りしめていた。これが、事故の真相を暴く鍵――貨物機に積まれていたEMP装置の詳細、そして事故当日にそれが旅客機に及ぼした影響。そのすべてが詰まったデータがここにある。


「これで終わりなんでしょうか?」

ジウンの声には疲労と不安が混じっていた。


「いや、これは始まりにすぎない。このデータを公表し、世間に真実を届けなければならない。だが、それは容易なことではない。」

チェは低い声で答えた。


「どうするんですか?こんな重要な情報を、どこに持ち込めば安全なんですか?」


チェは短く息を吐き、バックミラー越しに後方を確認しながら言った。


「報道機関だ。信頼できる記者に接触する。だが、そこにたどり着くまで、俺たちは命を狙われ続けるだろう。」


ジウンは黙り込み、USBメモリを握る手に力を込めた。この小さなデバイスに、犠牲となった人々の声が詰まっている。その重みが彼女を支えていた。


そのとき、車の後方に見覚えのある黒いSUVが現れた。ジウンの胸が一気に締め付けられる。


「また来た……。」

彼女が恐る恐る呟くと、チェはすでに状況を把握していた。


「やつらだ。追いつかれたな。」


SUVは加速し、チェの車に距離を詰めてくる。ジウンは必死にシートベルトを掴みながら後ろを振り返った。


「どうするんですか?」


「振り切るしかない。」

チェは冷静に答えながらハンドルを握り直し、車の速度を上げた。


狭い市街地を抜け、暗い裏通りに差し掛かる。チェは鋭いカーブをいくつも切り抜け、追手を撒こうと試みるが、SUVは執拗に追いかけてくる。


「しぶといな……。」

チェが独り言のように呟いたその瞬間、SUVの窓から何かが覗いた。


「銃だ!」

ジウンが叫ぶ。


次の瞬間、銃声が鳴り響き、チェの車の後部に弾丸が当たった。車体が揺れ、ジウンは恐怖に息を飲んだ。


チェは冷静さを失わず、狭い路地に車を滑り込ませた。暗闇の中、SUVは少し距離を取られたようだったが、追跡を諦める気配はない。


「ジウン、USBを隠せ。最悪の場合、俺たちが捕まってもそれだけは渡すな。」

チェが指示を出す。


ジウンは慌ててUSBメモリを自分の靴の中に押し込んだ。その行為の中に、自分たちが追い詰められている現実を痛感する。


「ここで振り切る。」

チェは急にハンドルを切り、大通りに飛び出した。車のヘッドライトが眩しく、ジウンは目を細めた。


SUVも追ってきたが、チェはさらに速度を上げる。そのスピードにジウンは恐怖を感じながらも、チェの運転技術にすがるしかなかった。


ようやくSUVを振り切った二人は、ある小さなビルの前で車を止めた。チェは急いで建物に入り、ジウンもそれに続いた。


ビルの中では、一人の男が待っていた。中年の記者らしきその男は、彼らを見るなり立ち上がった。


「チェ調査官か?」


「そうだ。このデータを渡すために来た。」

チェが短く答えると、ジウンは震える手でUSBメモリを差し出した。


「ここに、事故の真相が詰まっています。」


記者はそれを受け取り、慎重に手に取った。


「これは本物か?」


「確実だ。貨物機の積荷にあったEMP装置、それが旅客機のシステムに影響を与えた証拠だ。これを公表することで、多くの命が救われるはずだ。」

チェの声には強い決意が込められていた。


そのとき、建物の外から足音が聞こえた。チェはすぐに異変に気づき、窓越しに外を確認した。


「やつらだ……追ってきた。」


チェはジウンに低い声で言った。


「ジウン、逃げろ。このデータは彼に任せろ。」


「そんなことできません!」

ジウンは声を荒げたが、チェは静かに彼女の肩に手を置いた。


「君が生き延びることが、この真実を守ることに繋がるんだ。」


外から銃声が響き、建物が揺れるような錯覚を覚えた。チェは拳銃を手に取り、最後の決意を固めた。


「行け!」


次回予告


データを手に入れたジウンたちだが、敵の追跡はさらに激化する。真実を守るための最後の闘いが迫り来る中、彼女たちは究極の選択を迫られる。次回、物語はクライマックスへ――真実の行方とジウンの運命がついに明らかになる。

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