第2話 それは友情の

 疲れから、私が夕方から寝ようとしていると。スマホが鳴りだす。私にかけてくるのは真由美だけだ。


『明日、ファミレスで会食だからよろしく』


 って……二人なのに会食なのかと思っていると。


『特製グラタンを二人で食べるから。会食ね』


 思っていた事が伝わったように話始める。真由美はエスパーかただのバカかと感じる。


 そうだ。美亜も誘えないかな……。


 私が美亜を誘うたいと言うと。


『がってーむ、電話番号が分からないね』


 そう言えば知らないな……。


 そもそも、私と真由美はどんな関係なのであろう?


 真由美の話によると学内で絶対正義をやり過ぎて、私の面倒をみる事になったらしい。


『あ、それから、今、家の前にいるから、早く入れて』


 は???


 確かに住所は教えたが普通来るか?私が玄関のドアを開けると傘をさした真由美がいる。


 今日は雨だったな……。


「ずぶ濡れの子猫ちゃんの私を温めて……」


 私は小首を傾げて一言多いと改めて感じる。取りあえず、部屋に入れると真由美は幸せそうになる。


「えへへへ、女子の部屋だ……」


 動機が不純なのか?なのか?と思っていると。


「サービスシーンなので脱いでいい?」


 アホか!単純に濡れたと言え!私はパジャマを貸してあげて風呂場で着替える様に言う。


 濡れた服は乾燥機に入れる事にした。


「ぐへへへ、女子のパジャマだ」


 これ以上は深く考えるのは止そう。でも、決して不幸な気分にはならなかった。底抜けに明るい真由美は私の心を落ち着かせた。


 その後、私は絶対正義の最後の試練である。


『レットブックのダンジョン』の出し方を聞こうとパジャマ姿の真由美にたずねる。


「全然、弱いじゃん。これで『レットブックのダンジョン』に行ったら全滅だよ」


廃ソシャゲーらしくこのプレイ時間で弱いのか。私が唸っていると……。


「ジャン、和服だよ」


 さっきから、気になっていた荷物は黒を基調とした和服であった。あきらかに私のサイズであった。


「勿論、着てくれるよね」


 怒ってみようかと思ったがそれも幼げない。少し興味もあったので着てみる事にした。ネットで着かたを調べようとすると。


「私に任せなさい」


 上機嫌で真由美は私に和服を着せる。


 へー、ホントに日本人形のような感じになった。真由美はスマホを取り出して動画を撮り始める。何処かにアップするらしい。


 しかし、何か憂鬱だな……。


 そうか、これではモテない。彼氏の欲しい年頃でこの格好は不味い。


「撮影が終了したら脱いでいい?」

「ボス、問題ないです」


 私はボスではない、一般ピープルだ。そこだけ訂正を求めると真由美は素直に頷く。妙な会話が続いた気がするが気にしないのである。


 それから、私は和服を脱ぎ普段着に戻る。真由美のスマホを貸してもらい、動画を見るのであった。


 うぁあー。


 日本人形が歩いている。自分でもドン引きだ。これはまさにオーラが違う。完全に怪奇現象である。


「今度は真由美と一緒に和服を着たいな」


 私の言葉に真由美は『私は人間だよ』と言うのであった。少しカチンと来たが真由美の言う事だし。


 私は自分のスマホを手にして絶対正義を始めるのであった。


 学校の保健室で絶対正義のログインイベントを真由美と一緒にする事にしてから、朝に余裕が出てきた。私は絶対正義が朝の七時に更新されるので、その時間に合わせた生活であった。時間に追われていた時はスマホを川に投げ捨てしまいたい気分の日もあった。


 さて、今日は土曜日である。土曜授業があるので保健室登校の準備をする。


 そして、出発時間になると真由美にメッセージを送る。


『えー土曜日だよ』

『ログインイベントは皆でした方が楽しいよ』


 ブツブツ言う真由美を説得して登校だ。中等部の校舎に着くと私は毎日、昇降口から中に入るのではなく玄関からそっと入るのであった。


 勿論、許可は得ている。


 あれ?玄関が閉まっている。


 仕方なく職員専用の出入り口から入る。一緒になった禿げた中年のオッサンにかろやかに挨拶をする。


 見かけない人だが問題なかろう。


 でも……。


 何処かで見た事があるな。保健室の中に学園のパンフレットが置いてあった。少し気になったので開いてみると……。


 禿げたオッサンが理事長として載っている。あいたたた、偉い人だったか。


 私は不幸だと思うが『祈りの石』は反応していない。


 そんなものか……。


 保健室の中に入ると真由美がいる。


「土曜授業は自由参加だから今日はまったりできるよ」


 それから、二人でスマホを開いて絶対正義を始める。一時間ほど遊ぶと、美亜が保健室の隅で独り言を言っている。保健室の先生が美亜の背中をナデナデし始める。


 私は心配そうに見ていた。ここには病人が集まるのかな。と、思うのであった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る