救出
リスポーンしたらるむは、遥人がいる雪山ステージへと一心不乱に駆け出していた。遠くから聞こえる異様な衝突音にますます胸騒ぎがする。
やがて、巨獣の唸り声のような重低音が鳴り響き、それも止んだころ。らるむの目に飛び込んだのは、かつて雪山ステージだったはずの変わり果てた姿だった。
:超巨大雪崩があったらしいぞ
:うわー、映像流れきた。とんでもないやつだ。
:例の転生くんの放った奥義で雪崩が起きたっぽい
:リスポーンした奴らが口々に恐怖体験をツイートしてる
そういえば私まだ配信切ってなかったんだ。悪夢のようなコメントを見ながら少しの間呆然としていたらるむだったが、雪崩の跡に取り付くと1人雪を掻き出していく。
:ま、まさか雪を掻き出すのか?!
:こんな量、とても人力じゃ無理だって
:運営、運営にお願いしよ!
:こんな事態、運営も想定外だから相当時間かかるぞ
:詰みじゃん
:2度目の転生ご案内〜
配信者なのに無言でひたすら雪を掘り出していく。鬼気迫るその姿に呆然と雪崩の跡を見ていたプレイヤーが1人また1人と雪を掻き出していく。
:らるちゃん、マジ?
:おれ、ログインして掻き出しにいく
:知り合いのプレイヤーに声かけるわ
異例の無言配信にリスナーも次々と雪の掻き出し作業へと向かっていく。
「らるちゃん!リスナーさんから聞いたよ!雪崩で大変なんだって?!」
「ミリカちゃん?!そうなの、大切な人が雪崩に巻き込まれて死にそうなの!!」
「わかった、知り合いのVTuber全員に声かける。雪を掻き出せばいいんだよね?!」
「あ、ありがとう……」
同じ事務所の星野ミリカが声掛けから、少し落ち着きを取り戻したらるむは、状況を伝えるために必死に声を紡ぐ。
「雪崩に巻き込まれた人の中に、生死がかかってる人がいます!今、1人でも雪を掻き出す人が必要です!助けてください!」
:うおおおおおお
:ガチのお願いだ
:おれ、海外に翻訳して流すわ
:雪崩の映像分析してみる。闇雲に掘らなくてよくなるかも
らるむ必死のお願いにリスナーにも火がつく。物凄い速さで情報が駆け巡り、VTuber、ゲーム配信者、あらゆるリスナー、その有人知人、海外勢に至るまで集まりだす。
「運営からの緊急アナウンスです。雪山ステージの雪を掻き出してください。これは誤報でも訓練でもイベントでもありません!人命救助です!詳細は雪宮らるむの配信を見て!」
:運営が全プレイヤーにアナウンスした……
:たった一人のために前代未聞すぎる
:熱すぎる。なんでおれは見てるだけなんだ。
:応援も大事!気づいたことがあれば何か言え!
何万というプレイヤーが、雪崩発生からわずが15分で集まりつつある。みんなが雪を掻き出している。
「そうだ、一生一緒に?ネックレス!」
あのネックレスには特殊な機能がついていて、らるむが使うと座標がわかったはず。雪を透過して輝く光源。きっとそこに遥人かいる!
全速力でその座標に向かうと、光源の周辺にいた人が殺到しあっという間に雪を掻き出していた。
「ネックレスはあったけど……」
プレイヤーの1人がネックレスをらるむに差し出す。
「ひっく、ひっく、ひっく」
らるむは堪えきれず大粒の涙がこぼれる。ここまで来てまだ見つからないなんて。
“神具にランクアップします”
謎の声がらるむの耳に入ってくる。すると、ネックレスについた1番大きな宝石が特定の方向を指し示す光を放っている。らるむは直感した。その方向に遥人はいる!
「うわあああはああぁ」
配信を忘れてとにかく雪を掻き出す!ネックレスの見つかった場所より更に深い場所に向かう。あらゆるバフを掛け崩落の危険も気にせず一直線に掻き出す!
人影がみえる、遥人くんだ!ついに体に触れる。回復魔法を注ぎながら、ついに雪から遥人を救い出した。
「遥人くん!大丈夫?!」
顔色は黒ずんで目は開かない。まさか。
「……らるむ?コラボめちゃくちゃにしてごめん……」
「……っ!!」
声にならない泣き声を上げながら、らるむは遥人に抱きつくと長い間そうしていた。雪山ステージ中に救出の連絡が流れ、万雷の拍手がいつまでも鳴り止まなかった。
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