第3話

「ありがとう、佐藤くん助かったよ!」


 たまたま廊下でクラスメイトの女子が書類をぶちまけてしまって、拾うのを手伝っていた俺だった。


 やっぱり、今のようにお礼を言われると気持ちがいいものである。


と、その時、


「なにしてたの、健二くん……?」


 そこには髪の色と同じく、どことなく黒くて冷たい雰囲気を放っている花蓮の姿が。


「な、なにって、内山田さんが困ってたから、手伝っていただけで……」


「ふぅん……」


「花蓮こそ、どうしたんだよ?」


 花蓮が生徒会とテニス部両方に所属している。いずれも幹部だったり、レギュラーだったりと重要なポジションに就いているので、帰宅部俺と帰りが重なることはありえない。


「やっぱ、今色々と辞めてきて、正解だったなぁ……」


「辞めた……? え……?」


「だって私には健二くんっていう、とっても、とっても、とっても、とっても、とっても大好きな恋人がいるんだもの! 私の時間はぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ! 君と過ごす時間に使いたいんだもん」


 足音もなく、さっと俺の近づいてきた花蓮は、まるで蛇のように腕へ体を巻き付けてくる。

瞬間、ガチャリと妙な音が俺の手首から響き渡る。


「て、手錠!?」


「んふふ……これで、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと、ずっと一緒……はむっ……」


「っっっっっ!?」


 突然、花蓮は俺の耳を甘噛みしてくる。


 これぞリアル耳舐めASMRの如く、ぴちゃぴちゃといった音と共に、甘美な刺激が耳から全身へ駆け巡ってゆく。


 昨晩の初夜、同じことをされていた俺は、あっという間に骨抜きにされてしまう。


「んふ……健二くん、行こ♡」


 俺はなすがまま、なされるがまま、花蓮に引きづられ、街の中央にあるタワーマンションの一室に連れ込まれる。


「ここが私のお家♩」


「はぁ!?」


「お笑い芸人で田辺って人がいるでしょ? 実はあの人、私のお父さんなんだ♩」


 その芸人って、最近じゃお笑いよりも司会とかそういうのでよく目にする人だよな!? 超ビックな人だよな!?


「まぁ、私はその人の隠し子で……お母さんはもういないし……だから、ここで一人暮らしを……」


 寂しそうにそう自分語りをする花蓮へ、俺は胸の詰まる感覚を得る。


 たぶん、ずっと関わりのないと思っていた子との、共通点を見出してしまったからだろう。


 だからなのか……


「行こう、健二くん……今夜は、私の家での初夜だから、私がいっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、いっぱい、君にご奉仕してあげちゃうんだから♡」


 花蓮がちょっとおかしいのはうっすらと感じていた。

だけど覚えたての甘美な性感の体験は、俺の意思を完全にそっちの方面で塗りつぶして。


 相変わらず胸を揺らし、白い肌を真っ赤に染め、玉のような汗を浮かべつつ、必死に俺にご奉仕してくれる花蓮は本当に素敵で。

しかも、2回目にしてナマの感覚は恐ろしく気持ちよくて。なにも気にせず放出できることは、なんて素敵だと思ったりして。


 結局この晩も、手錠で繋がった俺たちは、体の深いところさえも繋げあって、朝方近くヤッて、ヤッて、ヤッて、やりまくる。


ぶっちゃけ、俺この先どうなっちゃうのよ、と思った次第である。



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ちなみにこの作品よりは過激ではありません(笑)


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