第6話:集客イベント

篠田商店が噂の危機を乗り越えつつある中、誠は新たな戦略に取り組む必要性を感じていた。ライバルである商業ギルドの妨害は続く可能性が高く、さらに町の商店全体の注目を集めるためには、積極的に行動する必要があった。


「ただ噂を払拭するだけじゃ足りない。もっとお客さんに喜んでもらえる仕掛けを作らないと。」


誠は頭をひねり、町全体を巻き込むような大きなイベントを考え始めた。そして浮かんだアイデアが、「感謝祭」と銘打った集客イベントだった。


イベントの準備は迅速に進められた。ミルリ村の農家から特別に提供された新鮮な野菜を使った無料の試食会や、子どもたちが楽しめる野菜スタンプ作りコーナー、さらには地元の職人が協力して作った特製の野菜スープの提供など、多彩なプログラムが用意された。


「このスープを飲めば、どれだけ素材が新鮮で美味しいか一目瞭然だよ!」


誠は農家や町の協力者たちとともに、着々と準備を進めた。特に、農家の老夫婦が持ち込んだ自慢のトマトを使った料理は、一際注目を集めるだろうと期待されていた。

イベント当日、篠田商店の前には多くの人々が集まっていた。子どもを連れた家族、主婦、冒険者、そして近隣の商人たちまでもが興味深そうに足を止めている。


「みなさん、本日は篠田商店の感謝祭にようこそ!」


誠が高らかに挨拶すると、会場は拍手と歓声に包まれた。無料で提供された野菜スープは予想以上の人気を博し、試食コーナーではトマトの甘みとジャガイモのホクホク感に驚く声が上がる。


「これ、噂の野菜なんて信じられないくらい美味しいね!」

「このお店、すごく頑張ってるのね。」


人々の声を聞きながら、誠は手応えを感じていた。そしてイベントの目玉として用意していた特別セールが開始されると、店内はさらに活気づいた。


しかし、その熱気を遠くから冷ややかに見つめている人物がいた。商業ギルドのリーダー、ベルモンドだ。

「奴め、また人を惹きつける手を打ちやがったか……。」

彼は篠田商店の人気を脅威と感じつつ、冷静に次なる一手を考え始めた。


イベントが成功裏に終わる頃、誠は疲れた表情を浮かべながらも満足げだった。

「これで少しはお客さんの信頼を取り戻せたかな。でも、次はもっと強い戦略を考えないと。」


誠の心には新たな闘志が芽生えていた。この集客イベントは篠田商店を支える大きな一歩となったが、商業ギルドとの戦いはまだ終わらない。

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