知人
木全伸治
知人
「おい、おい、お前、どうしてくれるんだ!美香ちゃんマジで死んじゃったぞ」
スマフォを耳に近づけると、いきなり、知人の声が、耳に飛び込んできた。
「なんだよ、いきなり、声がでかいぞ」
スマフォの向こう側の声は、こちらの文句を無視して一方的な苦情を言い出した。
「お前に紹介された例の心霊スポットでロケしたら、そのときのレポーター役のアイドルの子が、ロケの数日後に変死したんだよ」
「まじか・・・」
そうなる予感はしていたが、一応、驚いたふりをする。
「マジもマジだぜ、で、他に共演してたアイドルの子たちも怯えたり、その子の事務所からおたくの変な番組のロケに参加したからうちの子が死んだからそっちが責任とれとか、こっちは大変なんだぞ」
「おいおい。誰にも知られていない本当に激やばな場所を教えろとしつこく言ってきたのはお前の方だろ。それに、確か高名な霊能力者の先生をゲストに呼ぶから安心しろとか言ってたのもお前だろ」
「そうだけど、ロケの後、その霊能力者の先生とは連絡つかなくて、どうしたらいいのか分からないんだ」
「知るかよ。自己責任だろ。俺は本当にやばい場所だから、そう、その霊能力者にも忠告しておいてくれって言っただろ」
「お前の忠告は確かに伝えたけど、その先生、『素人の意見なんか気にする必要はない』って言って、うちのプロデューサーも『大丈夫、大丈夫』でズンズンロケ進めちゃって。途中で、気分が悪くなる子も出てたんだけど、その子は、ロケバスに休ませてロケ強行しちまったんだ」
「だったら、素人の忠告を無視した、その先生やプロデューサーの責任じゃねえか。俺に文句をいうのは筋違いだ。だから何度も、俺は本当にやばいから注意しろと言っただろ、忘れたのか」
「だから、その先生やプロデューサーにはお前の忠告はちゃんと伝えたって」
「で、俺にどうしろと、素人の忠告とか言って無視した連中を助ける義理は俺にはないだろ。関係者が呪い殺されても俺のせいじゃないだろ」
「ああ、分かってる。とりあえず、そのロケに参加した、他のアイドルの子だけでいいから何とかしてくれよ」
「これだから、夏が来るのは嫌なんだ」
「あ?」
「夏になると毎年、こういうバカげたトラブルの繰り返しだ。興味本位で、この時期、肝試しにいい場所を教えろとか、たく、夏は肝試しや怪談とか誰が決めたんだ」
「おい、もう少し前向きに考えろよ、これがきっかけでお前、アイドルの子を紹介してもらえるんだぜ」
「芸能人と付き合いたくて、ADとして業界入りしたお前と一緒にするな」
「まあ、俺の悪口はいくら言ってもいいけど、アイドルの若い子だけはマジでなんとかしてくれよ」
「分かった、電話越しで恨み言が聞こえる、お前にとり憑いている子の除霊はしないぞ。多分、変死した女の子がお前を恨んでとり憑いているじゃないか」
「おいおい、マジ? 俺、憑かれてるのか」
「お前は、その素人の忠告を無視した霊能力の先生かプロデューサーに何とかしてもらえ。俺は前向きにアイドルの子と知り合えるためだけに頑張るからさ」
「だから、霊能者の先生とは、今連絡が・・・」
「素人の俺に、そんなに頼るなよ」
「悪かった、そんなに怒るなよ。お前の忠告をもっと真剣に伝えるべきだったと本気で反省してるから」
「夏がまた来ても、こういうのはもうなしだからな」
「ああ、分かった」
「絶対だぞ」
「で、連絡のつかない霊能力者の先生、無事だと思うか?」
「その人って、アイドルみたいな若作りな声が出せる?」
「ん~、年はいってると思うが美魔女って感じで美人だったぜ」
「じゃ、お前についてるの、もしかしたら・・・」
「おいおい、まさか、やめてくれよ、芸能界でも霊能力が高いって評判の人だったんだぜ」
「お前も、夏が嫌いになっただろ」
知人 木全伸治 @kimata6518
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