❄3
「僕の家、サンタいないから」
赤い膝小僧をさすりながら、ユキは困ったように笑った。
プレゼント何にすんの?
クリスマス前、学校で持ちきりの話題を何となく出したつもりだった。
「プレゼント、ほしいなぁ」
雪の日でも上着も着ずに、一週間前と同じボロの長シャツを着ている姿を見りゃ、いくらバカでもそうユキが言うワケが分かった。
だったらオレが最初のサンタになればいいじゃん。
クリスマス当日、そんなアホな考えでコンビニの一番高い極肉まんを持って自転車をかっ飛ばした。
食う事しか脳がない小坊がサプライズで買ったプレゼント。
イチバンにユキの「ありがと」って言葉が聞きたい。
うまそうに肉まんを食べる顔が見たい。
でもオレはその日、ユキに会えなかった。
次の日も。
その次の日も。
何度家に行ってもユキはどこにもない。
「アイツ? 死んだんじゃねーの」
悪びれもせず言うクラブのダチも、うっとおしそうに答える近所のオジサンもだれも居場所を知らない。
ユキが確かにここにいた事も、遊んだ毎日も。
全部幻だったのかってぐらい、ユキという人間はオレの世界から消えた。
その後で、分かっちまった。
オレはずっとユキが好きだったんだって事を。
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