❄2
きっかけは、今じゃほとんど覚えていない。
小五の夏休み、サッカークラブの別の学校のダチと遊ぶ途中で寄り道した一軒のボロい家。誰の家かも、何をしに行くかも分からないままただダチについていったと思う。
「やーい、ウソつきビンボー! 出てこいよぉ!」
ダチの一人がその家に小石を投げると、中から一人の子供が黙って出てきた。
何考えてんのか分からない無表情。色のない吸い込まれそうな黒の瞳と目が合って——その瞬間、オレの心はメチャクチャにぶち壊された。
肩まで伸びた黒髪と、雪のような白い肌。
オンナか、オトコかどっちか分からない。
けれど、こわいぐらい整ってるきれいな顔。
着てる服もうっすら汚れてて、オレの学校には絶対いない変わってるタイプ。
なのにオレは、その一瞬でどうしようもないぐらいソイツに引きずり込まれてしまった。
なんだ、アイツ。
その日はパニックで逃げ出すぐらい、オレとその子の——ユキとの出会いは、ヤバいぐらいの衝撃から始まった。
それからオレは、一人でユキの家に行くようになった。
自転車で片道二十分。
クラブが休みの火曜、晴れでも雨でもユキの家に行っては遊びに誘った。
夏休みまで赤の他人だったヤツに、どうしてそうまでして会いに行っちゃうんだろう。自分でもワケ分かんねぇって思ってたけど、それでもやめられなかった。
「君ってヘンな子だね」
ユキもオレとおんなじ事を思ってたんだろう。毎回そう言いながら、ユキはオレの誘いを一回も断らなかった。
二人だけで海で遊ぶのも、木登りも、ユキと遊ぶのはフツーに楽しかった。
けど、ユキは他のダチと何かが違かった。
幼顔のくせに妙にませてて、オレのことも誰かのことも全部分かってる、みたいな言い方。
子供だけど子供っぽくない。
みんなと違うから自分は嫌われてるんだと、そう言うユキの事をオレはますます気に入った。
「君はどうして僕と遊んでくれるの?」
気がついたら目が離せない。
「だれかといっしょって、楽しいんだね」
ドキドキがずっと止まらない。
「またね」
またオレとだけ遊んでほしい。
でもそのワケがやっぱり分からないまま、あっという間に夏が終わって、短い秋もすぐに過ぎて——。
季節は、冬になっていた。
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