この夢の続きはまた次の日に

目を覚ますともう昼前だった。

部屋の中に女の子はいなかった。

俺はもしかして夢をみていたのだろうか。嫌な夢を忘れるために二度寝して、自分に都合のいい夢を。

でも、布団から明らかに俺のものとは違ういい香りがする。やっぱりあの子が部屋に居たんだ。よかった、夢ではなくて。


「……よかった、のか?」


そうだよ。本当にいいのか、俺? あれはストーカーとか不法侵入とか、だよなやっぱり。

気持ちが落ち込んでいてそれどころではなかったけど、何か取られてたりカメラとか仕掛けられてたりしてたらどうしよう。一応確認しとくか。


一通り確認したが、特に問題はなかった。

財布も通帳もある。スマホも触られた形跡はない。部屋の中にも異常はなかった。

だったらマジでただ俺を見に来ただけ? なぜ?


「ま、いいか。変なことされたわけじゃないし」


むしろあの子のおかげで気持ちが楽になったような気がする。最初に起きたときの死にたいほど憂鬱な気分が、スッキリと無くなっている。

朝起きたら隣に誰かいてくれて、抱きしめて頭を撫ででくれて、大丈夫と声をかけてくれて。たったそれだけでこんなにも気持ちが楽になるものなのか。今まで知らなかった。


また来るだろうか?

普通に考えたら、俺に顔を見られたのだからもう迂闊なことはしないだろうな。

いや、逆に開き直って直接会いに来たり……はないか、流石に。誰かもわからない相手に期待しすぎだな。


こんなこと人に言ったら頭おかしいんじゃないかって言われそうだ。それでも。あの子は俺が苦しんでいるときに、優しく撫でてただ一言大丈夫と言ってくれた。俺はそれに救われた。嬉しかったんだ。だから……


「もう一度会いたい……」


我ながら馬鹿で単純だとは思う。

でも、俺は。

あの幸せな心地をもう一度……。

夢のような時間の続きを、俺は……。


本当にあの子が俺のストーカーなら、これからも俺のことを見てくれているかもしれない。もしそうだとしたら。


「もう少しだけ頑張ってみるかな」


今日は午後から大学だ。今までなら悪夢をみた日はだるくて休むところだ。


「よし、行きますか!」


この日俺は、随分と久しぶりに、過去ではなく未来を見て前向きな気持ちで玄関の扉を開けたのだった。

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この幸せな夢の続きを 雨利アマリ @amatoshi

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