二通目
お前と違う高校になってから、随分と疎遠になってたけど、覚えてるか?
親父さんから色々と聞いたよ。マリとずっと続いてるって。俺ら、仲良し三人組だったからさ、ちょっと仲間外れ食らったみたいでショックだったよ。
まあ、そんな冗談はさておき。
何で何も相談してくれなかったんだよ。そんなに思い詰めるまで。俺らが友達だったのは、中学を卒業するまでの話だったのか?
違うだろ?
俺は今でも、お前のこともマリのことも、友達だと、ずっと思ってる。
特殊詐欺に強盗。
ニュースでお前の顔を見て、凍りついたよ。
何かの嘘だと思って、一生懸命、調べたよ。事件のこと。でも、お前は罪を認めていて、こうやって裁かれてる。間違いなく、お前がやったってことなんだよな。
ガキの頃から、俺ら一緒に悪さばっかしてたけど、お前が何の理由もなしに人を騙したり傷つけたりするような奴じゃないってのは、分かってる。
未だに俺達は、お前が何であんなことに手を染めたのかを知らない。教えてくれって言っても、マリにすら言ってないお前のことだ。人に言えない事情があったんだろう?
でも、それが分からないままじゃ、俺もマリもどうしていいか分からないんだ。
もしも、もしもの話だけど、お前が誰かの命令で、あんなことをする羽目になったって言うのなら、包み隠さずそれを警察に伝えてほしい。
今はマリもこっちに帰ってきてるし、お前がずっと、貝みたいに口を閉ざしてる理由なんて、もうねえんだよ。
親父さんのことも、マリのことも、皆で守るから安心しろ。俺達はとっくに覚悟が出来てる。
迷惑が掛かるだなんて思うな。
俺達は、お前と『他人』になった覚えなんか無いから。
お前は、お前がやるべきことをやれ。
それと、この間、お前の親父さんがウチの会社に来たよ。ウチの親に、出所後のお前を受け入れて欲しいって、土下座までして。
俺もウチの親も、お前の親父さんにそんなことされなくたって、二つ返事で受け入れるつもりだったのによ。見るのが辛かった。
もう親父さんに、あんな真似をさせるんじゃねえぞ。
出所したとき、仕事に困ってるようなら、すぐにウチに来い。お前の席は用意しておく。絶対に。
けど、約束してほしいことがある。
まず、悩んだ時、苦しい時、一人で抱え込むような真似は絶対にするな。
そして、マリを泣かせるようなことはするな。
最後に。一発、ぶん殴らせろ。馬鹿野郎。
皆、お前のことを待ってる。早く出てこいよ。親友。
建一より。
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