薄いレモンサワー

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薄いレモンサワー

 昨日、二十歳になる息子の誕生日祝いに焼肉を食べに行ってきました。御多分に洩れず二十歳の記念にとお酒で乾杯などしたわけですが、息子の最初の一言が「このレモンサワー薄いな」だったんですよね。

「今日で二十歳になったんだよな、、その嘘のつけない性格は誰に似たんだ?」

「俺の家族は父ちゃんしかいないんだから父ちゃんだろ。」

 そんな会話を交わしたあと、息子の二十歳の誕生日に伝えようと決めていた事を話しました。


息子と私は血が繋がっていない事。

実父は息子が生まれる前に事故で亡くなっている事。

そして私は、、、

その事故を起こした会社の社員だった事。

息子が2歳の時に亡くなった妻のお腹には私との間に授かった子がいた事。

その出産が原因で妻が亡くなった事。

最後の夜に妻が私に託した願い事。

私がそれをまったく叶えられていない事。


 思わず溢れてしまった涙の味がなんだかしょっぱくて、ジョッキの残りを一気に飲み干したのですが、確かに息子が言う通り薄くてほんのりと甘い味のするレモンサワーでした。


 息子は二十歳になったとはいえまだ学生ですから、就職して自立できるまでは経済的な事は心配しなくていいが、いつでも好きな事やりたい事があったら好きなようにしていいと伝えました。誰に似たのか寡黙で口下手な息子は、その場では「わかった」と一言だけ。


 それからお互いに薄いレモンサワーを何杯か飲み、黙々と焼肉を食べ終えて家に帰りました。薄いとはいえ飲みすぎたのか眠くなり、早々に布団に潜り込んだのでもしかしたらあれは夢だったのかも知れませんが、私の枕元に息子がやって来てこう言いました。

「父ちゃんの家族は俺しかいないんだから。老後の心配はしなくていいよ。」


 まったく。私に似て口下手な男になってしまったな。私の息子として生まれてきてくれてありがとう。


 その時、私の頬を伝った涙は薄くて甘い、レモンサワーのような味がしました。

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