第6話

「へえ。ルカは一人っ子なんだ」


「うん、メラは?」


「兄さんが一人。」




そんな他愛もない話を毎日境界でするようになったのは、ごく自然な流れだった。






初めて会った日の帰り際、



「明日もまた、境界で」



と言ってくれた彼女に心を踊らせた俺は、それから街での仕事を終わらせたあと、すぐに境界へと向かうようになった。





ダストタウンのことは話したくない、と言う

彼女。



きっと何か訳があるんだろうと思った俺は、

深く尋ねることはしなかった。





毎日戦争に使うための道具を磨いては、日々爆撃の恐怖に怯える現実から目を背けることのできる二人の時間は、何よりも大切だったから。

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