第5話

「ダストタウンって呼ばれてるんだね、そっちでは。」


鈴を鳴らすような柔らかい声でそう呟くメラ。




「ごめん、気悪くした?」



「全然。呼び方なんか、どうでもいい」



それよりあなた、とまだ血が止まっていない俺の右腕に手を伸ばしてくる。




「怪我してるよ、どうしたの」 


「多分瓦礫で引っ掻いた。」


「瓦礫?」


「そう。俺の住んでる地区、昨日から爆撃にあってるから」



俺の言葉に複雑な表情を浮かべたメラは、何を思ったのか、突然身につけている灰色のドレスを破き始めた。



意味不明な顔で彼女の手元を見つめていると、



「包帯代わりになるといいけど」



そう言いながら白くて細い手で、丁寧に傷口に布を巻いてくれる。









「…早く終わるといいね」


恐らく戦争の事だろう。



憂いを浮かべながらそう呟く彼女の横顔に鼓動が早まったのは、気のせいじゃないと思う。

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