第3話

息を切らしながら、それでも懸命に走り続けていたのに。




唐突に立ち止まった理由は、近づいてはいけないと散々言われてきた境界が視界に入ったから






初めて目にしたその街は、空から降り注ぐ無数の埃のせいでよく見えない。




だけど、灰色なその場所の空気が薄淀んでいるのは分かる。




光が自慢の俺の街も、境界に近づくにつれ暗い雰囲気を纏っていった。







謎に包まれた隣の街の埃は、境界にはかかっていない。




ぼんやりとした視界が晴れるように、徐々にその場所が脳に焼き付いていく。










そして俺は、息を呑んだ。





















深い深い、漆黒に近い藍色の髪を持つ美しい

少女が俺の方を向いて座っていた。





二つの街を区切る、地面に太い幹を這わせた

境界の木の上で。

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