第3話 ダンジョン最下層からの脱出
主従の契約を結んだ後、儂らはこのダンジョンから脱出することにした。
その時キューっとキララのお腹が可愛らしい音を立てた。腹が減っているのであろう。儂は飯を食わずにいられるが人間のキララは食事をせねば生きていけない。
「キララ、飯食うか?」
「食べたいけれど私は食べ物を持っていないの」悲しそうにいう。
あのくそ女どもにとられたか初めから持たせてもらっていなかったのであろう。
そこで儂は、儂の能力の1つの【料理作成】を駆使してキララのためにポトフ風煮込み料理とパンを作ってあげた。
前前世の記憶に有った料理じゃった。そう言えば前前世の記憶によるとこの様な能力をスキルと呼んでおったのう。
「わー凄いジジちゃんが作ったの?私温かいポトンって大好きよ。そしてこれポトンじゃないみたいに初めて食べるおいしさよ、ジジってコックさんだったの?」
「いや違うぞ」
ほほう、この世界ではポトフをポトンというのか。
まあ喜んで食べてくれてるから儂も嬉しい。
「さて食べ終わったら出口に向かうぞ」
「うん」
この辺は150階層の入口だ。それも上空から落ちてくるしか入りようのない入口じゃからのう。
出口はもっと奥のどこかじゃろう。いまだかつて誰も踏破したしたことのない階層じゃから情報が限られている。儂の鑑定でもここの階層主を倒さねば、抜け出せないことだけは良く判る。
初めて遭遇した魔物は身の丈20mは有ろうかという一つ目の大巨人サイクロプスという怪物だった。
そのぶっとい手足が最大の武器だ。
儂はキララに身体強化、速度上昇、魔法攻撃力強化、格闘技術強化を施しておいて彼女の全身を防御結界で覆った。この結界は奴が踏み潰そうとしてもびくともしない。逆に奴の足に大きなダメージを与えることだろう。ん?ダメージ?また前前世の記憶が割り込んできた。
うん、気にせずに行こう。
サイクロプスが踏みつけ攻撃に出てきた。キララの華奢な身体が奴の足が地面を叩き付けるごとに浮き上がる。今のところキララに戦い方の支持をしていない。キララの持ち前の戦闘能力を確認したいし、危なくなったら儂が助太刀する。今後のキララの戦い方をどうするべきか考えておきたい。
儂の得意とする剣術を教えるには腕力も脚力も体幹もまだ弱い。鍛え上げなければ刀に振り回されるだけだろう。なので、前前世が得意だった徒手空拳の方が向いていると判断したのじゃ。
その読みが的中した。
キララはサイクロプスの腕や脚を足場にして駆け上がって奴の大きな一つ目に蹴りを放って視力を奪った。
見事だ!
この娘は鍛えがいがあることがはっきりした。楽しみじゃのう。
キララはその後大巨人の膝裏に蹴りを入れて四つん這いに崩れさせて後頭部にかかと落としを決めていた。
この娘ツエエーーー!!!
「ジジちゃん私レベルアップしたみたい]
そうじゃろう、そうじゃろうとも何しろ相手はAクラス冒険者5人以上のパーティーで、ようよう倒せる相手なのじゃからのう。
だがこの階層ではこの手の敵はまだ弱い部類だろう。この先は彼女本来の身体能力を鍛え上げてせめて小太刀でも扱えるようにしたいものだ。
というわけでキララの特訓が始まった。スタミナをつけるためにランニング、腕力をつけるために木刀での素振り、慣れてきたら敵との戦いを想定しての木刀の振り方を工夫して上から下へ、下から上へ、右から左、左から右、斜め切りの練習など実戦で筋を傷めないように筋肉に慣れさせていく。
驚いたことにキララはこれらの特訓を難無くこなしていく。見ているだけで、全くの初心者だったのが見る見るうちにベテランの動きになっていった。
これなら本物の刀を持たせても良かろう。
刀の重さに慣れて自由自在に振り回せるようになったら木刀での立ち合い訓練じゃ。この訓練で技を覚えてもらう。
それにつけてもこの子は実に天才じゃのう。常人なら10年はかかろうかという修練を3日で成し遂げてしまったのじゃ。
【修練時間短と言うチートスキルでも持っているのか?
鑑定してもチートスキルなどではではなかった。
正真正銘のキララの能力ゆえのものだったのじゃ。
続く
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