第2話 運命の少女

 運命の相手を探していると、とても懐かしいようなかぐわしい魔力を、とあるダンジョンの中に感じてそのダンジョンの中にふわふわと入った。


 お目当ての魔力は地下35階辺りから発せられているようだ。その階には腐ったような不快な匂いを発する魔力が3つある。

 魔物の魔力ではない。人間のしかも女の腐臭魔力だ。

この姿になってもう何年になるか定かではない。随分と長い期間この世界をさまよっていた思いがするが、これほどまでに腐臭を発する魔力の持ち主には初めて遭遇した。

 清純な魔力の少女を腐臭をまき散らす女どもが取り囲んでいる。その中の一番偉そうな女が口を開く。


 「テリオス様に言い寄るような、あなたなんか目障りなのよ。さっさと私たちのパーテイーから出ていきなさい。追放よ!」

 ほほうこの女、この国の3番目の王女か。テリオスとは勇者と言われておる男のことか。さしずめこの女、勇者に惚れていて清純な少女にとられると思って焦っているのじゃな。


 なぜそんなことが判るのか?

それは儂に鑑定の能力が備わっているからじゃ。


 人の心の奥まで推測できる能力じゃ。

神様は儂に色んな役に立つ能力を授けてくれた。

あの時神はこう言っていた。

「あなたが自分自身で自分の役目が終わったと感じる時まで死なないようにしておきますね」


 だから、特に敵意とか殺意とかには、敏感に反応出来るのだと感じている。


 臭い女の1人が清純少女に体当たりした。倒れた少女が罠のスイッチを入れてしまった。

少女はぽっかり空いた漆黒の穴に落ちていった。


 こいつらここに罠があるのを知っていてわざとぶつかって大穴に落としたのだな!この穴は奈落の底まで続いている。ここのダンジョンは100階層まで知られているが実は150階層まで有るのだ。

101階層から149階層までは何も無い空間で、150階層にダンジョンコアが有るようだ。


 おっとこうしている暇は無い。少女を助けに行かなければのう。

儂は少女を追って穴に飛び込んだ。途中で少女を追い越して

穴の底で儂は巨大化して少女が落ちてくるのを待つ。

来た来た。

 儂は彼女の落下速度を桜の花びらの散る速度まで落として、もふもふの巨大な体で優しく受け止めた。

 落下した時の恐怖のために気を失っているが肉体的には何の損傷も無い。

こうして触れ合っていると本当に何と心地良い魔力の持ち主であろうか。

この子が神々の愛し子なのであろうと実感した。


 この子の名前は?キララか。雲母のような名前じゃのう。

見た目通りにキラキラしておってなかなかピッタリの名前じゃのう。

 儂に孫は居らんかったが、もしも居ったらこの子のように可愛らしい女の子であればおそらく猫可愛がりしておったであろうかのう。


 おっと、気が付いたようじゃな。

「あれ、ここどこ?私はダンジョンの罠にはまって穴の中に落っこちたはず」

儂は彼女が起きる前に元の小さな毛玉に戻っておいた。大きなままだと魔物と勘違いされそうじゃからのう。

「お嬢ちゃん気が付いたかい?どこか痛むところはないかな?」

「えっ誰?人がいるの?」

 儂は彼女の前に姿を現した。

「残念じゃが儂は人間ではなく精霊の身でのう。これこの通り毛玉の姿をしておる」

「精霊様⁈ひょっとしてあなたが私を助けてくださったの?」

聡明なのようじゃのう。

「よう判ったのう。はっきり言おう、儂は神々から愛し子を守ってやって欲しいとこの世界に召喚された存在なのじゃよ」

「ええ、私が神様の愛し子って噓でしょう?」

「嘘ではない。そなたの魔力には神々しい素晴らしいオーラが感じられる。儂にはそれがかぐわしいものと感じている。それが儂の生命力を満たしてくれるのじゃ。どうじゃ儂と主従の契約をせぬか?そなたの魔力を儂が頂いて、儂はそなたの身を命を守ることを約束しよう」


「解りました。契約します。あのう、精霊様のお名前は?」

「儂はただのじじいじゃよそなたが名前を付けてくれ」

「うーん、そうね、ジジちゃんでどう?」

「ジジーじゃなくジジちゃんか!有難う。これより儂はジジとしてキララの守護神となることを誓おうぞ!」

「うん、宜しくね。ジジちゃん」


 こうして儂はキララのボディーガード、いや守護神になったのである。



続く

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