マジお姫様と王子様
卯野ましろ
第1話 ボクの好きな子
「なかたにえんはさー、好きな子いんの?」
「ボクは食品メーカーじゃない!」
「じゃ、やばたにえん」
「それもうボクの要素ゼロだし!」
友人たちにギャハハと笑われているボクの名前は、
「それじゃあバカ笑いしたところで、本題だ。中谷は好きな子、いるの?」
万年いじられキャラでイケメンでもないボクは名前負けしていて、王子らしさは皆無。自分の隣に、お姫様がいたことなんて……全然ない。
でも、そんなボクにも……。
「いるよ」
「おおっ、いるのか! 誰?」
ボクの即答を聞き、友人たちはノリノリだ。そんなにコイバナが好きなのか……?
「えっと……
「ほー、あの子かぁ!」
ますますガヤガヤ騒がしくなる。放課後特有の、外から聞こえる運動部の声や音が消されてしまうくらいの盛り上がり。
「確かに、かわいいかもな! 決して明るくはないけど」
「目立たなくて、大人し過ぎねーか? 何話せば良いか、いちいち困りそうだなぁ」
「あの子が喋ってんの、見たことないかも……」
「清楚系? 不思議ちゃん系? 地味系?」
あー、もう!
言いたい放題だな、君らは!
「うわっ! ビビったぁ~。おっかね~」
「いやいや怒るなって! 落ち着け中谷!」
「そんなに好きなら、そりゃ嫌な気分になるか」
「ごめん、言い過ぎたよ」
どうやらボクの心の声は漏れていたらしい。まあ良いや、それでも。だって……。
「白井さんはナンバーワンに超絶かわいいんだからな! もう二度と悪く言うなよ! 最高だよ白井さん……。名は体を表すこともあるって、白井さんを見て知ったんだ! あの白い雪のような肌! ミステリアスで大人しいが故にキュート過ぎる笑顔! いつだって、おしとやかな振る舞い! そして、こんなイケていないボクに優しくしてくれる……。白井さんが目立たないでくれて、むしろありがたいよボクは! だってライバルが全然いないから! マジでボクだけで良いんだよ、白井さんが好きな人間はっ……。ああ白井さん、好きだぁ~……」
ここでボクの熱弁は止まった。なぜなら今、ボクの視界の中に……。
「し、白井さん!」
ボクの大好きな……あの子が入ってしまったからだ。
「うわマジ?」
「すっげぇ偶然……」
「告白しちゃったよ中谷……」
「ど、どうなるのっ?」
ザワザワする友人たち。まさかの出来事にカチカチに固まるボク。そして……。
「ありがと……よろしく……」
あの雪のように白い顔を真っ赤に染めて、ボクの元へ歩いてくれた白井さん……ってボク何気に告白成功したんですけどーっ!
思わぬ形で、ボクの恋は実ってしまったのだった。
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