【1話完結】クリスマスの朝に見知らぬ外国人の銀髪美少女の義妹が俺の隣で寝ていた件

橘まさと

クリスマスの朝に見知らぬ外国人の銀髪美少女の義妹が俺の隣で寝ていた件

「んん……ホワイトクリスマスか……」


 俺——来栖 三太くるす さんた——が目を開けて、窓を見るとシンシンと雪が降っていた。

 今日はクリスマス、高校二年にもなった俺にはあまり縁のないものである。

 

「明日から冬休みだからなぁ……最後の登校日に向かうか」


 ベッドから出ようとして毛布をめくって腕を横に置いたら、ふにょんと柔らかい感触がした。


「んやぁん♡」


 そして、甘い声が聞こえてくる。

 幻聴というには生々しく、手に触れている柔らかいものの感触は夢としてもリアルすぎた。

 ゆっくりと、視線を向けると、そこには全裸の銀髪美少女が仰向けに寝ている。

 俺の手が置かれているのは彼女の膨らみかけの胸だ。


「うわぁぁぁぁぁ!?」

「うや……お兄ちゃんおはよぉ」


 全裸の銀髪美少女が起き上がり、女の子座りをして目をこすっている。

 いや、目をこする前に隠せ! いろいろと!


「え、は、おにい、ちゃ……ん?」

「お兄ちゃんは、おにいちゃんだよぉ~」


 ふわぁとのんきに欠伸をした銀髪美少女は俺に向かってにっこりと笑う。


「ちょっと! 三太! 学校遅刻するわよ! 朝ごはん食べないと片付けられないじゃない!」


 俺の部屋に近づく足音が聞こえて来た。

 この状況はヤバイ。

 声の主は俺の恐ろしい姉である、来栖 二子くるす にこだ。

 鬼の風紀委員の異名を持っているニコねぇにこの状況が見つかったら何を言われるかわからない。


「はやく、服! 服着て!」

「ふくー?」


 小首を傾げるしぐさが可愛い。

 いや、だがそんなことを思っている場合じゃない!

 俺はパジャマの上を脱いで銀髪美少女に着せた。


「三太ー!」

「お、おはようニコねぇ……」

「おねーちゃんおはよぉー」


 ドアをノックすることなく入ってきたニコねぇに俺が力なく挨拶をしていると、美少女がニコねぇに挨拶をする。

 あっちゃーと俺が顔に手を当てて、今後に起きることを警戒していると意外な言葉がニコねぇから出て来た。


「おはよう、フォウちゃん。三太と一緒に寝ていたら襲われるわよ? 何もない?」

「大丈夫だよっ」

「え、フォウ?」

「そうよ、私達の新しい妹になったフォウちゃんじゃない。お父さんが再婚してその人の連れ子よ?」

「は……え……」


 そんな話があったのかと思い出そうとするがモヤがかかってよく思い出せない。

 だが、なんとなくニコねぇがいっていることが正しいことのように思った。


「わかった。フォウ?」

「何、お兄ちゃん」


 改めてみると、俺が好きなアニメとかにいそうな理想的な妹がそこにいた。


「いや、朝ごはん食べて学校に行こうか」

「うん!」


 俺のパジャマを着たまま移動しようとしたフォウを引き留めて、俺は一言告げる。


「いいから、せめて部屋で着替えてくれ」

「はーい」


 んしょ、んしょといいながら俺のパジャマを脱ごうとしたので俺は急いで部屋の外へ退避した。


◇ ◇ ◇


 その後、着替えた俺らは普通に朝食を食べて、学校に向かう。

 電話で先に会社へ行っているため家にいなかった一番の姉である一夜(いよ)ねーちゃんにもフォウのことを聞いたが、当然のことのように認知されていた。


「うーん、なんかしっくりこないなぁ」

「お兄ちゃん変なの~♪」


 俺の学校の制服姿で雪道をはしゃいでいるフォウの姿は妖精を見ているようである。

 学校の同級生にも聞いたが、フォウのことを俺の義妹としてわかっており、一緒に学食でご飯を食べる時には弄られたくらいだ。

 あっというまに終業式も終わって帰り道。

 サンタクロースの恰好をして、ケーキを売っているオッサンを見た時、俺のモヤモヤが晴れてきた。

 とたんに起きる頭痛に俺は頭を抑える。


「あれ……確か、サンタに俺は……妹が欲しいと願……った?」

「お兄ちゃん思い出しちゃったんだね?」


 夕焼けの道を先にあるフォウが振り返り、辛そうにほほ笑んだ。


「オマエは……誰、なんだ?」

「お兄ちゃんが願った、妹だよ。クリスマスのプレゼント」

「そんな……だって、姉さんとかも知っていた……全部が、嘘?」

「今日一日だけの奇跡。私はそれだけの存在だよ♪」


 声色は楽し気なものの、俺に背を向けているので表情を見ることはできなかった。

 一日だけの妹、俺の理想の妹……このまま別れるなんて、俺にはできない。


「待ってくれ! じゃあ、残りの時間を俺と一緒に過ごしてほしい」

「うん、よろしくね。お兄ちゃん♪」


 前を行くフォウを追いかけて手を握り、俺は自分の心を伝えた。

 彼女が消えていなくなるまで俺達は楽しい時間を過ごす。

 明日から消えてなくなるとしても、この思い出はずっとあるのだから……。


 ――クリスマスの朝に見知らぬ外国人の銀髪美少女の義妹が俺の隣で寝ていた件(完)


———————————————————————


読んでくださりありがとうございました。


雪がテーマだったので、シーズンすぎちゃいましたけどサンタものです。

義妹でもあるので、空豆空先生のものに近いですが、ちょっと切ない系になってますw


↓カクコン10参加作品まとめ↓長編もあり。

https://kakuyomu.jp/users/masato_tachibana/collections/16818093090845723952

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