第2話 追放されし勇者、再起を誓う
### 第2話 「追放されし勇者、再起を誓う」
森の奥深く、日の光が届かないほどの茂みの中で、僕はその女性――エリスと出会った。彼女はぼろぼろの外套に身を包み、木槌を持ちながら、まるで探し物を見つけたかのような目で僕を見つめた。
「最高の武器になる、と言ったって……」
僕は彼女の言葉を反芻しながら、手に持っているただの木の枝を見つめる。エリスはその枝を手に取り、じっくりと観察した。
「枝の適正を持つ者は、稀有だ。これは単なる武器ではなく、可能性を秘めた素材さ。適正を最大限に引き出す鍛錬が必要だ」
エリスの言葉には力強さがあった。彼女は森の中に隠れ住む鍛冶師であり、かつては英雄の武器を生み出した伝説の存在だったという。
「俺を追放した国は、枝の力を理解できなかった。だが、君はまだ何もわかっていない。ここで、君の適正を鍛える」
彼女の言葉に、僕は希望を見出した。追放され、絶望に打ちひしがれていた心に、再び火が灯る。
「どうやって?」
僕はその方法を求めた。エリスは笑みを浮かべ、森の奥へと僕を導いた。
「まず、君の力がどこまで通用するのかを見せてもらおう」
彼女が僕を連れて行ったのは、森の中心部。そこには、巨大な魔樹がそびえ立っていた。その枝から、一部が折れて地上に落ちていた。それをエリスは拾い上げ、僕に手渡した。
「これは魔樹の枝。君の適正が本物なら、これを武器として使えるはずだ」
僕はその枝を握りしめた。ただの枝とは思えない重さと、何かが存在するかのような感覚が手に伝わってくる。
「まずは、魔物を討伐してみなさい。その枝で何ができるか、試すんだ」
彼女の指示通り、僕は森の奥へ進んだ。そこには、低い唸り声を上げる魔物が現れた。剣も魔法も持たない僕は、ただの枝で何ができるのか、自分でもわからなかった。
しかし、枝を振り回すと、魔物の動きが不思議と鈍った。枝が魔物の体に絡みつき、その動きを制限する。まるで生きているかのように、枝が僕の意思に反応していた。
「これが、枝の力……?」
驚きながらも、僕は魔物を倒すことに成功した。エリスが見守る中、彼女は満足げに頷いた。
「見事だ。これから君は、この枝を使いこなす方法を学ぶんだ。枝の適正は、ただの武器の枠を超えて、どんなものとも融合し、その力を引き出すことができる」
その日から、僕はエリスの元で修行を始めた。彼女の教えは厳しく、時には苛烈だったが、僕はそれに耐え、枝の扱いを学んだ。枝はただの武器ではなく、生命そのものを操る手段であると。
「絶対に、僕は再起する。僕の枝で……」
森の静けさの中で、僕は新たな決意を胸に誓った。追放された場所から這い上がり、最高の武器を手に入れるために。
エリスは僕に、さらなる訓練を与えた。枝を鍛えるための特別な鍛錬法を教え、魔物との戦闘を通じて枝の特性を引き出す方法を伝授した。枝は単なる攻撃手段ではなく、防具としても、治癒の手段としても使えることを知った。
「枝は成長する。君が成長するように」
エリスの言葉は、僕の心に深く刻まれた。彼女は僕に、魔樹の根から採れた特別な液体を渡し、枝をさらに強化する方法を示した。枝はその液体に触れると、輝きを増し、硬度や柔軟性が劇的に向上した。
「見ておくれ、これが枝の真の力だ」
エリスが示したのは、一本の枝が、まるで生命を持ったかのように、自己修復し、形を変える様子だった。僕はその瞬間、自分の適正がただの「枝」では終わらないことを確信した。
「再起するために、君はこの力を使うんだ。ただの枝から、世界最強の武器を作り上げるんだよ」
エリスの言葉に促され、僕は再び立ち上がる決意を固めた。追放された悔しさや痛みは消えずとも。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます