僕の適性は【枝】でした ~追放されたけど世界最強に成り上がる~

小林一咲

第1話 召喚からの追放

 眩い光に包まれて、気がつけば僕――天城悠真は知らない場所に立っていた。


 天井は高く、石造りの壁には荘厳な装飾が施されている。周囲を見渡すと、豪華なローブを纏った大勢の人々が僕を取り囲んでいた。


「ようこそ、異世界の勇者様!」


 中央に立つ金髪の美しい少女が、朗らかな声で僕に呼びかけた。その後ろには騎士団と思しき男たちがずらりと並び、壁際には杖を持つ魔法使いらしき人々も見える。


 ――これは、異世界召喚だ。

 頭が混乱しながらも、僕は目の前の状況を理解する。これはライトノベルやゲームでお馴染みの展開。まさか本当に自分が選ばれるとは思ってもいなかった。


「君はこの世界を救うために召喚された。我が国は魔王軍の脅威に晒されていて、君の力が必要だ」


 少女――巫女リヴィアが、真剣な表情で説明を続ける。その視線に宿る期待と使命感に、僕の胸は少しだけ高鳴った。


「わ、わかりました。僕でよければ、力を尽くします!」


 僕は勇気を振り絞って答える。リヴィアを始め、周囲の人々がほっとしたように微笑んだ。


「では早速、勇者様の適正を確認しましょう」


 その言葉に、僕の心臓は一気に高鳴った。適正――それがこの世界で与えられる才能だということは説明を聞く中で理解していた。剣や魔法、弓や槍――どれを引いても、僕はこの世界で活躍できるはずだ。


 魔法陣の中心に立たされ、周囲の魔法使いたちが詠唱を始める。やがて光が僕の身体を包み込み、温かい感覚が全身を駆け巡った。


「これが、僕の適正……!」


 光が収まり、僕の目の前に一枚の透き通った板のようなものが現れる。そこには、僕の適正が記されていた。


『適正:枝』


「……え?」


 一瞬、何かの間違いかと思った。しかし、何度見直してもそこに書かれているのは「枝」という文字だった。


 周囲の空気が、急速に凍りついていくのを感じる。リヴィアが眉間に皺を寄せ、訝しげに僕を見つめていた。


「……枝、とは?」


 騎士の一人が戸惑いながら口にする。僕も同じ疑問だった。枝なんて、武器でもなければ魔法の名前でもない。木の枝――それ以外に思い浮かばない。


「まさか……外れ適正とは……」


 誰かがそう呟くと、周囲の人々がざわめき始めた。リヴィアの表情は明らかに失望に変わっている。


「適正が枝では、この国の戦力にはなり得ません。申し訳ありませんが……あなたにはお引き取りいただきます」


 その言葉を理解するのに、少し時間がかかった。


「え、ちょっと待ってください!僕は、この世界を救うために――」


「この世界を救える力が、枝にあるとは到底思えません」


 リヴィアの冷たい声が、僕の抗議を遮った。


 その後、僕は手荒く城の外に追い出されることとなった。


 こうして僕は、異世界に召喚されてからわずか数時間で「役立たず」として捨てられることになった。


「枝、か……」


 森の中を彷徨いながら、僕は手近な木の枝を拾い上げた。それを握ってみても、当然ながら何の特別な感覚もない。ただの枝だ。


「こんなもので、どうやって生きていけって言うんだよ……」


 失意のまま森を歩き続けたその時――


「……おい、そこにいるのは誰だ?」


 低い声が背後から響いた。振り返ると、そこにはぼろぼろの外套を羽織った中年の女性が立っていた。手には木槌を持ち、険しい目つきでこちらを睨んでいる。


「その枝を見せてみろ」


 何も言えず差し出した枝を、その女性はじっと見つめた。そして、口元に微かな笑みを浮かべて呟いた。


「……面白い適正だ。育て方次第では、最高の武器になるぞ」


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お読みいただき、ありがとうございます。

ファンタジーを中心に書いております、小林こばやし一咲いっさくと申します。

以後、ご贔屓によろしくお願いします🥺


もしこの物語を楽しんでいただけたなら、他の作品もぜひチェックしてみてください。


『凡夫転生〜異世界行ったらあまりにも普通すぎた件〜』

https://kakuyomu.jp/works/16818093078401135877

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