第7話 上陸

 朝日が昇る頃、船からテロリストもとい、"ユートピア人"たちが降りてくる。

 島も急いでトラックに乗り込む。


 哲平の奴、ちゃんとやってんだろうな…


 ガチャ…


 助手席のドアが開かれた。

 咄嗟に身構える島。


「やぁすまない。

 俺は野村っていうんだが、君は島准一君だね?」

「そうだが…」

「前が出たぞ。

 とりあえず行きながら話そう」

 ハッと慌てて発進させ、前の車についていく。

「あんたは何者なんだ?」

「俺は"ある国"の護衛機関の者なんだが、坂本君と手を組むことになってだな」 

「ああ、そうなのか。

 じゃあここはどこか知ってるか?」

 トラックの隊列は二階建ての戸建ての並ぶ港町に入っていく。

 住人こそ見えないが、それなりに栄えた町らしい。

「ここはイルガ島だよ。

 VRCの本社がある」

「は?こいつらそんなところで何しようってんだ?」

「ひとまずテレビを着けてみろよ」

 トラックのナビモニターでテレビを着けると、キャスターが切迫した様子で喋っている。

「レザロ国議事堂の様子です!」

 群衆が議事堂に押し寄せている。

 それに対し軍が抵抗する様子もない。

 

「何だこりゃ?軍は何してる?」

 

 画面が変わり、市街地が映し出される。

「ここメサイ国では群衆と警察が乱闘を起こしています!

 この建物も危険です!」 


「どうなってるんだ?」 

「仮想国がテロをきっかけに一斉に立ち上がったんだよ」

「仮想国ってのはそんなにいっぱいできてんのか」

「まあね。

 全ての仮想国の狙いはリアルでの世界統一だ。

 そこでリアルの国を乗っ取るか…」 

「他より先にVRCを取った国が、一歩リードするってわけか」

 野村は眉を上げて頷いた。

「あんたたちリアルの国としても、存続のためにVRCがほしいわけだ」

「いや、うちとしては都合のいい奴にVRCを獲ってもらって、うちとVRCで友好関係を結べればいい」

「それが哲平ってわけか」

 野村は再度頷いた。


 

 哲平と明里たち人質は錠をかけられ港町を歩かされていた。

 人質の中には、他国から連れてこられたらしい者も複数見える。

「私たちどうなるのかな…?」

「まだ殺されはしないよ。

 それじゃ人質としての役割がパァになる」

 躓いて転んだ女性をユートピア人が助け起こす。

 思っていた以上に人質は丁寧に扱われる。

 ユートピア人に迎え入れるためか。

「こんなことしておいてまだ善人面?」

「"善人"なんだろうよ。奴らからすれば。

 これからはそういう時代が来る。

 みんな自分の国が正義なんだから」  


 島の中心は山になっており、その斜面から港にかけて町は広がっている。

 穏やかな町だが、家屋は廃れている。

 何年も前に住人たちが出ていき無人となったのだろう。


「正義って何かしらね」

「え?

 そりゃあ弱きを助け…とかじゃないの?」

「身内の弱者を守るために、他所の弱者は攻撃していいの?」 

「……」


 正義というのが悪なんだ

 力というのが悪なんだ


 あの日、晴香は海を眺めながら呟いた。

 哲平は長い髪を潮風になびかせる晴香を見た。

「どういうこと?」

「ううん。何でもないの。

 夕陽に照らされる静かな海、カモメの声、こんな景色をずっと見てたいなって」

 その横顔に哲平は見惚れていた。

 晴香もその視線に気づく。


「まつ毛、長いんだね」 


 あの時にはもう、こうなることを晴香はわかっていたんだろうか。

 横の明里が少しふらつく。

「大丈夫か?」

「うん、少し疲れが出ただけ」

「ほら、あそこみたいだぞ」


 哲平たちは長屋の中に収容された。

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