第12話 機能系スキルと外見
次に俺が目を向けたのは、機能系スキルだった。攻撃や防御とは違い、これらのスキルは直接的な戦闘力は持たないものの、使い方次第では極めて有用な場面が多い。
むしろ、こういうスキルがあるとないとでは、実際の行動に大きな差が出る。
まず、俺が選んだのは2つのシンプルかつ明快なスキルだった。
【テレポート(伝送)】
【ぐっすり眠れ】
【テレポート】については、もはや説明すら不要だろう。行きたい場所を思い浮かべるだけで、瞬時にそこへ移動できる。
移動の手間や時間が完全になくなるのだから、これ以上便利なスキルはない。
「例えば、面倒な移動を一切省略してすぐ目的地に着けるとか……」
そんな想像をしながら、俺はニヤリと笑った。
逃げるとき、サボりたいとき、あるいはただ遠くのリゾート地でのんびり過ごしたいとき——どんな状況でも、これがあれば完璧だ。
そして、もう1つのスキル、【ぐっすり眠れ】。
このスキルの効果も単純だが、実に強力だ。対象を深い眠りに落とすというもので、見た目こそ地味だが、その可能性は計り知れない。
「……これ、案外ヤバいスキルじゃないか?」
俺は画面を見つめながら、自然と脳内でさまざまな場面をシミュレーションしてしまった。
例えば、戦闘中に厄介な敵が現れた場合、これを使って強制的に眠らせるだけで、瞬時に危機を回避できる。あるいは、交渉や取引の場で相手を黙らせたいときにも使えるだろう。
そして……ちょっと不謹慎だが、別のシチュエーションも思い浮かんでしまった。
「まあ、例えば……その……ちょっとしたイタズラとか、ね。」
そう自分に言い訳しながら、少し咳払いをして思考をリセットする。何にせよ、このスキルは戦闘以外でも十分すぎるほど使い道があるのは間違いない。
接下来目に留まったのは、【小世界】という一際目立つスキルだった。
その名前だけでも既に壮大な感じが漂っていたが、俺は詳細を確認するために説明を開いた。すると、その内容を見た瞬間、心臓が少しだけ早く鼓動し始めた。
——独立した空間を創造し、その空間を完全に支配できる。空間の大きさ、環境、法則など、全てを自分の思うままに設定可能。
「……これって、俺だけのプライベート空間ってことか?」
思わず低く呟きながら、画面をじっと見つめた。想像するだけでワクワクが止まらない。
自分だけの小さな世界。それは現実でもゲームでも、誰しも一度は夢見たことがあるような特別なものだ。俺はその夢を、今まさに手にしようとしている。
「やばいな……これ、本当にやばいぞ。」
目の中に興奮の光が宿り、俺は指先で軽く画面をスクロールした。自分が完全に掌握する世界、誰にも邪魔されない空間。ここで何をするも自由、どんな設定をするも自由。
「これなら、最高の秘密基地が作れるな。」
つい口元に笑みが浮かび、指を軽く鳴らしてしまった。頭の中では既に、この空間をどう使おうかという計画が始まっていた。
理想の環境を整えたり、戦利品を飾ったり、あるいはただリラックスするだけの場所にするのもいい。
しかし、その興奮の中で、俺は次のスキルリストへと目を移した。
そして、そこで見つけたのは……なんとも言えない、非常に奇妙なスキルだった。
画面を見た瞬間、俺の表情が徐々に微妙なものへと変わっていった。
【精神控制】——その説明文が目に入った瞬間、俺の視線はピタリと止まった。
——対象の精神を完全に支配し、自分の命令に絶対服従させる。どんな意思も逆らうことは許されない。
数秒間、その内容をじっと見つめていた俺の口元に、知らず知らずのうちに意味深な笑みが浮かんでいた。
「……これ、完全に“悪趣味専用スキル”じゃん。」
思わずそう呟きながら、胸の奥に抑えきれない興味が湧き上がってくる。
だって、考えてみろ。目の前にどんな相手が立ちはだかろうと、俺が指を一本動かすだけ、あるいは一言命令を発するだけで、そいつらは俺の言いなりになる。従わせる内容だって無制限だ。何をさせるかなんて、俺の自由次第。
「……これ、やばすぎだろ。いや、これ、絶対ダメなやつだろ?」
心の中ではそう警告しているのに、顔にはどうにもならないニヤつきが浮かんでしまう。
頭の中では、このスキルを使ったシチュエーションが次々と湧き出てくる。どれもこれも、まともとは言いがたい内容ばかりだ。
むしろ、どんどん破廉恥で危険な方向に進んでいく自分の想像力に、少し引いてしまうレベルだ。
「いやいや、ダメだろ、これ……!」
俺は慌てて頭を振り、心の中の“邪念”を追い払おうとする。手のひらで軽く自分の頬を叩き、真剣に自分へ言い聞かせた。
「落ち着け、冷静になれ。悪ノリして暴走すると絶対面倒なことになる。」
そう自分に警告しながらも、画面のスキル説明から目を離すことができない。だって、このスキルの魅力はあまりにも強烈だった。
どんな状況でも、これさえあれば完全に主導権を握れる。敵対者を無力化するだけでなく、場合によっては周囲の全てを自分の思い通りに操れる。
正直、このスキルが持つ可能性は計り知れない。
「……まあ、結局は使い方次第だよな。」
俺はそう自分に言い訳しながら、このスキルをリストに追加した。スキルはスキルだ。使うかどうかは自分次第。
接下来は年齢の調整だ。
俺は迷うことなくスライダーを動かし、18歳という数値で止めた。この年齢は、まさに青春真っ盛りの時期だ。
体力も気力も充実していて、何にでも全力で挑める年齢。それに、無邪気で自由だった時代への懐かしさもある。
「18歳……やっぱり、ここが一番だよな。」
俺は小さく呟きながら、画面を見つめた。もう一度、あの若さに満ち溢れた感覚を味わえるなんて、期待が膨らむばかりだ。
次に進んだのは長相の調整だ。
これについては特に深く悩むこともなく、前世の自分の顔を基準にして少し微調整を加えた。
今の姿も基本的に自分そのものだが、どうしても気になっていた部分をほんの少しだけ手直しすることにした。
例えば、鼻筋を少しスッキリさせたり、目の周りの印象を柔らかくしたり、といった程度だ。派手にイケメン化するつもりは全くなかった。
俺の目指すのは、整った清潔感だ。別に「モデル級にかっこいい!」みたいな顔じゃなくてもいい。むしろ、誰からも嫌われない爽やかな雰囲気を目指した。
「うん、これでいいだろ。」
最終確認を済ませ、システムが設定を受理すると、俺の見た目に対してBランクという評価が表示された。
「……Bランク、か。」
「おお、Bランクなら十分じゃないか。」
俺は心の中でそう納得しながら、画面に目を戻した。正直、外見に関して俺はそこまでのこだわりはない。清潔感があって、周りに不快感を与えない程度であれば、それで十分だと思っている。
とはいえ、せっかくここまで手を加えられるのだから、全体のバランスも考慮してみるのも悪くない。見た目の調整だけでなく、体型と気質の2つにも手を加えることにした。
まずは体型。筋肉質すぎず、かといって華奢でもない、健康的で引き締まった体つき——これを目指してスライダーを動かし、Sランクに設定。
次に気質だが、これも直感的にスライダーを最大値まで引き上げた。堂々としていて、落ち着きがありながらも親しみやすさを感じさせる雰囲気。それを意識して調整を進めた。
結果、外見の総合評価は一気にAランクへと跳ね上がった。
「……いいね、これなら申し分ない。」
俺は満足げに画面を見つめながら、大きく息をついた。これ以上凝るつもりはないし、必要もない。これで十分すぎるほどだ。
「うん、これならどこに行っても十分通用するな。」
ベッドのヘッドボードにもたれながら、俺は心の中でそう呟いた。
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