森の中で

星之瞳

第1話

「ねえ、お母さんこの白いものは何。わ!冷たい!!」シマリスの子はそう尋ねた。

「これかい、これは『雪』と言う物だよ。寒いと雨が凍って降ってくるんだ」

「雪か!ね、外に出てもいい?」

「危ないから止むまで駄目よ。今日は温かくして寝ましょうね」

「なんだ、つまんないの」シマリスの子はそう言ったがお母さんと一緒に木のうろの巣で温かくして寝た。


翌朝。シマリスの子は起き出したがなんだか明るい。うろの入り口が白く塞がっている。

「お母さん起きてよ!真っ白だよ!」

「ああ、入り口が塞がっているね」そうお母さんが言うと入り口の雪を外に落した。

入り口から外を見たシマリスの子は目を見張った。すべてが真っ白。地面が見えない。

「かなり積もってるね。雪は重くてね、埋もれると動けなくなることもあるんだよ。お母さんと外に出てみようかね」

「え、いいの?」

「雪を経験しておかないと余計に危ないからね。さあ、ゆっくり木から降りよう」

お母さんが先にうろから出る。子供も入り口から出てみた。

「さ、木を降りるよ」ゆっくりとお母さんは降りて行く。子供も続いた。

「地面が見えないだろう。深く積もっていると出れなくなるからね。まず手で触ってみなさい」恐る恐る子供は雪を掴む。

「冷たい!それに手でつかむと溶けていく」

「そうだよ、でもねこうして固めると」お母さんは雪を手に取り雪玉を作って近くの木に投げた。

「雪は固めると固くなるんだ。それが当たったら痛いし、ケガをするかもしれない。だから積もったときはむやみに外に出るものではないんだよ。木に積もった雪が落ちてきて埋もれたりしたら大変だからね」

「うん、解った!寒いね、帰ろうよ。おなかすいた」

「そうだね。巣に帰ってご飯にしましょう」

親子は木を登って巣に戻った。


シーンと森は静まり返っている。何事も無かったかのように。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

森の中で 星之瞳 @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

参加中のコンテスト・自主企画