でも解く前に答えたい!

「はいセンセ〜! クイズとか年末の振り返りも大事だと思うんですけど! やっぱり何回考えてもこの状況とセンセーの事が謎でしょうがないです! 教えてくださいあにゅー!」


 ひかりはこたつに入りながら右手を元気良く上げ、こたつの上に乗っかる謎生物に質問を投げかける。


(そういやさっき布団から出る時、なんかこたつくらい暖かいのが、もぞもぞしてるなって感じあったんだけど、なんかあの布団に電気毛布でもあったのかな?)


 こたつの暖かさに感動しながら、ふと思った疑問。


 だがひかりにとってはそれは、かなり些細な事だったので、もう気にしなくて良いかと思い、皆の話に混ざる事にした。


「賛成じゃ〜。アタシも知りたい。お主があまりにもチャリってるから知りたくてしゃーないのじゃ」


 ひかりの左側から、若干ふぬけた顔で謎生物に言葉を投げかけるハピエル。


「え〜ハピエルちゃん! チャリってなんですか? 自転車ですか?」


 ひかりの前方、ハピエルの左方、謎生物の後方から声を出すのはイフだ。


「なんかなぁ、関西の方言らしいのじゃが、歌舞伎や人形浄瑠璃の道化やオモロイ場面なんかに使うらしいのじゃよ。この前調べたばっかだからホントか知らんけど」


「調べたって白状しちゃうの、とてもいさぎがよいですね……」


 頭に、漫画やアニメで使われる💧のマークを携えてそうな顔をするひかり。


 さっきまでと打って変わって、かなり緩い雰囲気に終始包まれる一同。


「まぁ聞かぬは一時の恥、知らぬは一生の恥と言うじゃろうし、偏屈より素直な方がまだマシじゃろと思っての」


「それもそうかもね〜♪ まだ出会って数分だけど、ハピエルちゃんは凄く素直そうで好きですよ!」


 イフはハピエルのその言葉を受け、銀髪女性の本人に向かい、目を細めた笑顔で小首をかしげていた。


「そないな事言われたら照れてまうじゃろが〜。イフちゃん、お主もやるの〜」


 左肘を使って、コノ、コノと言いながらまんざらでも無い笑顔(もはや凄い嬉しそう)にひかりは心が温まる感じを覚えた。


(なんか、数十分しか話してないけど、皆可愛いなぁ)


「とりあえずこっちの説明しても良きにに?」


 真っ白くてひょうたんのような丸い体、ちょこんと短く生えた2本の手、2本の足。


 顔らしい顔は無いが、本来なら顔があるであろう上の部分には、薄い水色の波線が縦に3本と均等に並んである。


 頭の両端には、とても小さい犬の耳のような物が生えていて、少し前に垂れ下がっている。


 顔は無いが、よく見ると愛らしい姿形をしている。


 俗に言う、気持ち悪くて可愛いキモカワ生物のように思える。


 もしかすると、一部の層からは全部が可愛いと思われるかもしれない姿をしていた。


「はい! お願いしますセンセー!」


 両手を握ってワクワクポーズを取るひかり。


「こっちの名前は『にに』。あなた達で言う種族のくくりになってるかな。えっと、ヒト、みたいな言い方するでしょあなた達」


「私は「イフイフ、イフイフイフ」の管理人なのでヒトかと言われたら違うと思いますね〜! あっ、これ訂正とかじゃないですよ、でも不快に思ったのなら失礼しました! いいえ失念です!」


 両手をいっぱいにあげて、元気に動きながらぺこりと謝るイフ。


「アタシはタイムループの神様じゃぞ。ヒトと一緒にされたらそれはなんかこう、ヒトがびっくりするじゃろ」


 頬杖ほおづえをついてはよたこ焼きが食べたいのじゃ、とでも言いたそうな顔で言うハピエル。


「私はその……ヒトと言いますか、ヒトの形をしているんですけど、日にち限定と言いますか……。制服だし……」


 ひかりの右方、ようやく初めて声を発したセイ。顔を上げてはいるが目がとても泳いでいる。


(えっ……? 皆本当にヒトじゃないの? 何それそんなのあり? なんかアタシだけ仲間外れ感スゴくない……? 何かのブラックジョークなのwowwow……?)


「えっ……。なんか皆さん、凄いんだね。人外ばっかだったにに……」


 ちょっと困った顔で1番人間らしい態度を取るにに。


「やめて!? ににさんが一歩距離取ったらアタシなんか疎外感スゴイから!?」


「何を言ってるんじゃひかり☆ お主だって、ヒトというより広義的な意味で電磁波みたいなもんじゃろ、名前が光なんだから☆」


「満面の笑みで普通に笑えない事言うのやめてもらえませんかグーパン飛びますよ??????」


 悪意の欠片も無い純粋なハピエルの笑顔に少々ブチっときたひかりは、右拳をグーに置き換えメラメラと燃え盛る炎が見えそうな感じでニコニコしていた。


「あっ、しゅ、しゅみましぇん……」


「分かれば良いんですよ〜☆ 仲直りしましょうね〜☆」


「あっ、はい(高音の小声)……」


 引きつった顔のハピエルと、ニッコニコ満面フル笑顔のひかりの握手シーンは、どこかこの世の闇を表しているようだった。


 くわばらくわばら。


「2人とも仲良いんですね〜♪ 少しの時間なのにすご〜い! いいなぁ、私も皆と仲良くなりたいですよぉ」


 両手を合わせてニコニコのイフ。


「私にはあんまり仲良さそうに見えませんでしたよ、イフさん……」


 他のメンバーとは違って、終始大人しいセイは、ひかり達の絡みを見て割とびくびくしていた。


「まぁとりあえず脱線しまくってるから戻るね。こっちの種族名はにに。で、こっち自身の名前は『みょっちゃん』だにに。ワガヤブって場所で何でも屋を任されてるにに」


 小さな両手を腰にあて、えっへんと言っているようなポーズをとるみょっちゃん。


「もしかしてだけど、みょっちゃんの"ちゃん"までが名前?」


 片眉をピクピクさせ、ちょっと困った顔をするひかり。


「そうだよ。ににによってはみょっちゃんちゃんって呼んでるのも居るかな」


 棒立ちで答えるみょっちゃん。


「あっ、人によるじゃなくて、ににによるって言った。本当ににになんじゃの」


「凄いですね〜! 字面的に読みづらそ〜!♪」


「あにゅう。色々とツッコミ所も違うような」


 頬杖のハピエル、拍手のイフ、一周回って落ち着くひかり、愛想笑いのセイ。


「それでね、実はなんだけどこっちの事情で皆さんの事を呼んだんだ。ワガヤブって所で何でも屋をしてるって言ったでしょ? 今回のみょっちゃんの任務は、ワガヤブの悪伝承を倒す為に、良い噂を貯めてクイズで紡いでく事なんだにに」


 身振り手振り、小さな手で大きく動くみょっちゃん。


 だが、それを聞いても4人はイマイチぴんと来ていなかった。


「あにゅー。みょっちゃんセンセーに質問なんだけど、とりあえずなんか凄い壮大なファンタジー世界に巻き込まれたって事だけは一応理解したんてすよ。でも、ワガヤブの事も、悪伝承も、よく分からないんですよね」


 右手を上げながら冷静に聞くひかり。


 それを見ながらうんうんとうなづく3人。


「あーそっか! 皆さんは知らなかったね! いけないいけないにに!☆」

 

 右手を頭の後ろに回し、うっかりさんポーズをするみょっちゃん。


「天然じゃったのかみょっちゃんは……?」


 ボケ担当になりつつあったハピエルですらツッコむ始末。


「えっとね、ワガヤブっていうのは、ワガヤブワールドとも呼ばれていてね。地球の人は皆知らないと思うけど、地球で噂になった悪いお話は大体ここに集まってくるの。それで、怪物のような物体になってワガヤブで暴れまくるんだよ。その悪い噂を「悪伝承あくでんしょう」て言うの」


 困惑しながらもうんうんとうなづく4人。


「でね、にに達が皆で協力してその悪い噂を断ち切ってるの。失敗すると、それが天変地異になったりしてワガヤブを滅ぼしちゃう恐れがあるからさ。だから、地球の皆さんを呼んで、良い噂の力を貰うんだ」


 真剣な面持ちで、4人に語りかけるみょっちゃん。


「それって、大分壮大かつ重大な話じゃないですかみょっちゃんセンセー……?」


 生唾を飲むひかり。


「あの……。壮大な現実を見てる実感はあまり無いのですが、とにかく明るく居ればワガヤブを悪伝承から救う事が出来る。そういうお話であってますか……?」


 恐る恐るの発言だが、どこか意思の強い感情を覚えるセイの眼差しだった。


「そうだよ! ワガヤブでは、良い噂の力が貯まると、悪伝承を倒す存在が現れる。それが「善伝承ぜんでんしょう」。クイズは善伝承を現す為の神具なんだ。クイズを解くと、良い噂の力が貯まって善伝承を現せられるんだよ!」


 興奮しているような、ワクワクした感じで話を進めるみょっちゃん。


 一同は、壮大過ぎる話に終始ついていけてなかったが、とにかくやらなければいけないのではないか? という雰囲気にはなっていた。


「つまりそれって、イフちゃん達が楽しくクイズを解けば良いって事なんですか?」


 大きな目をぱちくりさせながら、小首をかしげるイフ。


「それでも良いんだけど、やっぱり良い噂をしてからの方が力は貯まりやすくなるにに」


「あっ……待って? それが冒頭の年末の振り返りって事!?」


 かなりビックリした顔でみょっちゃんに聞くひかり。


「そゆこと!」


 小さな手で、鳴らない指パッチンをするみょっちゃん。


「ギャグシーンかと思ったら伏線!? あにゅー! みょっちゃん中々の高等テクニック使いますねー!」


「先生が無くなって普通にみょっちゃん呼びになったのじゃが」


「まぁ、クイズ解いた後にササっと語ってくれたら良い噂を蓄えられるし、クイズ解いてからで良いよにに」


「設定ガバいね!?」


 心の声どころか見た目もまたせわしくなり始めたひかりに、一同はなんか段々と楽しくなってきた様子。


「なんか最初こそ、テンション高すぎるし、ツッコミとか時々怖いので私は苦手なタイプかもって思ってたんですけど、ひかりさんを見てると元気が出てきますねっ」


 右手を小さく口の前で握り、目を閉じて微笑むセイ。


「えっ! あの、ほんの数分しか会ってないのにハイテンション過ぎる所を見せてすみませんっ。セイさんを度々怖がらせていたかもしれない、というのは自覚していたんですけど……」


(この状況でハイテンションな人間とか、ホラーとかパニック系の映画ですぐ死んじゃう役割だしなぁ……)


「いいえ。私はヒトと接する事が本当に限られていたので、明るい方と話すのも凄く楽しいんだなって思えましたよ!」


 ニッコリ笑顔のセイ。


「セイさん……きゃわいいです……」


(後で連絡先交換しよーっと!)


「おーい。お主デュフ笑顔が出とるのじゃが」


 ニヤニヤしながらひかりに話しかけるハピエル。


「えっ。そんな事ないかもやもしれませんよ?」


「ひかりちゃん、誰にでもニヤニヤしちゃうの良くないですよー!♪」


 お互いを特によく知らない4人だが、雰囲気はとても明るくて良い物になってきた。


「ところでなんですけど、何故私達が選ばれたんですか? 他の人でも良さそうですけど?」


 疑問をていしたのはイフだった。


「それは簡単だよ! 皆さんが、ワガヤブの良い噂や、語られる善伝承によく似た人達だったからなんだ!」


 大きく手を広げるみょっちゃん。


「そうだったんですね! これは失礼しました! いいえ失念です!」


 ぺこりとお辞儀のイフ。


「あにゅ……つまりそれどゆこと?」


「まぁ恐らく、皆さんが善伝承に出てくる登場人物の、パラレルワールド的な人物だからだと思うんだ! まぁ説だから本当か分からないけどね!」


「パラレルワールド要素もあるの!?」


 ずっとビックリしているひかり。


 最終章に続く!

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