第22話 決断の果て
真奈たちを「試練の迷宮」の中心部で待ち受けていたのは、魔界の未来を左右する最終試練だった。闇の名を持つ者が語った「選択」とは、魔界そのものの在り方を根本から変えるもの。その内容に真奈たちは驚愕し、深い葛藤に苛まれる。
果たして彼らはどのような未来を選び取るのか——。
◇
三人の前に現れたのは、漆黒の鎧に身を包んだ謎の存在だった。その姿は闇の名を持つ者自身のようにも見えるが、実体を伴っておらず、まるで幻影のようだ。
「試練を乗り越えたお前たちに与えられる最後の選択。それは、魔界の未来をどう導くかだ。」
その声は深く響き渡り、空間そのものが揺れるようだった。
「選択肢は二つだ。ひとつは、この混乱を力で制し、魔界を一つの強固な秩序でまとめ上げる道。もうひとつは、すべての種族が共存し、自由を追求する新しい魔界を創る道。」
その言葉に真奈は息を呑んだ。一見すると「共存の道」が正しいように思えるが、闇の存在は続けた。
「共存の道は理想的だ。しかし、その実現には多大な犠牲が伴うだろう。秩序の道を選べば、多くの者が苦しむが、安定は早く訪れる。」
「そんな……。」
真奈は苦しげに眉を寄せた。
◇
ラザールは考え込んでいた。彼は王子として、秩序を保つことの重要性を理解していた。秩序の道を選べば、自分が中心となり魔界を統治する責務を負う。しかし、それが一部の者に苦痛を強いるものであることも承知していた。
「俺は、どちらを選ぶべきなのだ……?」
ラザールの中で迷いが渦巻く。そんな彼を見つめ、真奈が口を開いた。
「ラザールさん、あなたが選ぶのは魔界のためですか? それとも、みんなの未来のためですか?」
真奈の言葉に、ラザールははっとした。
「お前は……皆を救える道を信じるのか?」
「私は、どんなに難しくても、一緒に頑張れば乗り越えられるって信じたい。」
その瞳の中に揺るぎない意志を感じたラザールは、少しずつその言葉に心を動かされていく。
◇
イグナスは二人のやり取りを聞きながら、自分自身の立場を考えていた。彼は戦士として多くの戦いを経験し、犠牲の痛みを知っている。
「俺はどっちに加担するべきだ? ラザールの選択を支えるか、それとも理想を追いかける真奈の道を信じるか。」
彼の脳裏に浮かぶのは、過去に失った仲間たちの顔。戦乱の中で散った命を思い返すたび、心に重い痛みが走った。
「犠牲を前提にした未来なんて……もう見たくない。」
その一言は、自らの覚悟を決定づけるものだった。
◇
闇の名を持つ者が手を振ると、二つの光の扉が現れた。一方は赤く燃え盛る「秩序の道」。もう一方は、穏やかな光をたたえた「共存の道」。
「さあ、選べ。」
三人は視線を交わす。それぞれの想いが言葉を超えて伝わった瞬間、ラザールが一歩前に進み出た。
「俺たちは、共存の道を選ぶ。」
その声には揺るぎない決意が込められていた。
「たとえどんな困難があろうとも、この道を進む。それが王としての責務だ。そして……一人の仲間としての選択でもある。」
真奈とイグナスが頷く。三人の意思が一致した瞬間、共存の道の扉が眩しい光を放ち始めた。
◇
扉を抜けた先には、青空と緑豊かな風景が広がっていた。それは、魔界では決して見ることのなかった光景。
「これが……未来の魔界?」
真奈が呟くと、闇の名を持つ者の声が響いた。
「これは、お前たちが選んだ道の先にある可能性の一つだ。しかし、選択だけでは何も変わらない。この未来を現実にするのは、これからの行動と覚悟だ。」
その声が消えると同時に風景も消え、三人は迷宮の外へと戻っていた。
◇
迷宮を出た三人を待っていたのは、魔界の重鎮たちの厳しい視線だった。試練を乗り越えた証は持ち帰ったものの、「共存の道」を進む決意を伝えるにはさらなる説得が必要だ。
「ここからが本当の戦いってことか……。」
イグナスが苦笑する。
「でも、もう迷わない。私たちが信じる道を進むだけだよね。」
真奈の言葉に、ラザールとイグナスも頷く。
魔界の未来を切り開くため、三人の新たな戦いが幕を開けた。
◇
迷宮を出た真奈たちが直面するのは、魔界の保守的な勢力との激しい対立。共存を掲げる彼らの決意が試されるとき、思わぬ助っ人が現れる——。
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