第21話 試練の迷宮

虚無の渦で「闇の名を持つ者」との対話を経た真奈たち。闇と魔界の共存を探るための試練を課された彼らは、その舞台となる「試練の迷宮」へ足を踏み入れる。この迷宮は魔界の古代魔術によって創造され、挑戦者の内面を映し出し、心の闇と向き合わなければならない場だった。試練を乗り越えられる者は極めて少ないと伝えられている。

果たして、真奈、ラザール、イグナスの三人はそれぞれの試練を乗り越えることができるのか——。

迷宮の入り口は巨大な石造りの扉で、そこには古代魔界文字で「真実を求める者、己の闇を知れ」と刻まれていた。扉の前に立つ真奈は、緊張で息を呑む。

「ここが試練の舞台……?」

「そうらしいな。見た目からして、いかにも厄介そうだ。」

イグナスが警戒しながら剣を軽く振るい、ラザールは無言のまま扉に手を触れた。

その瞬間、扉が重々しく開き、真奈たちは淡い光に包まれる。

「気を抜くな。何が起こるかわからん。」

ラザールの言葉にうなずき、三人は中へと足を踏み入れた。

迷宮内部は、一面が鏡のように光を反射する不思議な空間だった。進むにつれ三人の姿が分断され、それぞれ異なる試練に直面することとなる。

真奈がたどり着いたのは、二つの扉が並ぶ部屋。扉の上には「帰還の道」と「共存の道」と書かれていた。

「帰還の道……? これって、私の元の世界に戻れるってこと?」

声に出して呟くと、扉の傍に黒い影が現れた。それは真奈自身の姿をした「もう一人の真奈」だった。

「戻りたいでしょ? こんな危険な世界にいる理由なんてないもの。」

影の真奈は微笑みながら話しかけてきた。

「でも、ラザールやイグナスさんが……!」

「彼らはこの世界の人間。あなたが関わらなくても、いずれ解決するかもしれない。あなたはただの普通の女の子。自分の幸せを選ぶのが当然じゃない?」

真奈は拳を握り締めた。

「私は、逃げたくない……! この世界で出会った人たちのために、私ができることを最後までやりたい!」

すると、「共存の道」の扉が淡い光を放ち始めた。真奈はその光に向かって歩き出す。

ラザールが立たされたのは、荒れ果てた戦場を模した空間。瓦礫の間には、傷つき倒れた魔族たちの姿が散らばっていた。

「これが……未来の姿なのか。」

すると、どこからか幼い声が聞こえた。振り向くと、血まみれの子供がラザールを見上げていた。

「王様、どうして助けてくれなかったの……?」

その言葉にラザールの心が軋む。さらに次々と現れる魔族たちが、彼を責め立てるように叫ぶ。

「お前の無策が私たちを滅ぼした!」

「王としての資格がない!」

ラザールは剣を握り締めたが、その手が震えていた。

「俺には……何もできないのか……。」

しかし、そのとき真奈の顔が脳裏に浮かんだ。

「いや、俺は諦めない。どんな未来が待っていようとも、守り抜いてみせる。」

その瞬間、戦場の幻が霧散し、彼の前に光の道が開けた。

イグナスが迷い込んだのは、漆黒の森。周囲には誰の姿もなく、彼は独りきりだった。

「こんな静かな場所、性に合わないな……。」

軽口を叩いてみるが、応答はない。

やがて、木々の間から彼の過去の記憶が浮かび上がる。師匠との訓練の日々、戦場での仲間の死、そして自分が心から信頼していた者たちの裏切り——。

「結局俺は、誰にも頼れないのか……?」

孤独の苦しみに苛まれたとき、彼の頭に真奈の笑顔が蘇った。

「バカか、俺。あいつらがいるじゃねぇか。」

その瞬間、森の闇が消え去り、彼の前に出口が現れた。

三人が再会したのは、迷宮の中央。試練を越えた者だけが到達できる場所だった。

「全員、無事だったみたいだな。」

イグナスが安堵の表情を浮かべる。

「でも、これで終わりじゃない。」

真奈が厳しい表情で呟くと、空間に再び闇の名を持つ者の声が響いた。

「試練を乗り越えたこと、見事だ。しかし、真の選択はこれからだ。」

その言葉とともに現れる新たな扉。それは魔界の未来を決定づける最後の試練への入り口だった——。

共存の道を探るために課される最後の試練。その選択は魔界の未来を大きく左右することになる。果たして真奈たちは正しい道を選べるのか?

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