第11話
日々、畑が広がり、住民たちが増えていく。
木の実や野草の栽培、さらに森での狩りや薬草採集など、生活の幅も着実に広がっている。
俺たちが理想とする黄金郷への道は、順調に思えた。
しかし、あの領主の部下たちが再び姿を現した。
しかも、今度は前よりも態度が一層強気になっている。
「へえ、こんなに人が増えてるじゃねえか。勝手に居座りやがって、これじゃ大繁盛の村ってわけだな」
リーダー格の男は馬上から俺たちを見下ろしながら鼻を鳴らす。
どうやら領主自身がこの廃村の噂を聞きつけ、興味を持ちはじめたらしい。
「うちの領主様も視察に来られるかもしれない。お前らはちゃんと歓迎する用意をしとけよ」
「歓迎ねえ……俺たちは普通に暮らしてるだけだぞ」
「偉大なる領主様が来るんだ。並の迎え方じゃ済まねえぞ。きっちり礼を尽くして、納めるもんは納めろ。いいな?」
横暴な態度に、住民たちの間に不安が走る。
俺が睨むと、男は肩をすくめて下卑た笑いを浮かべる。
「まあ、ここまで繁盛してるんだ。きっと領主様は気に入るだろうさ。ちゃんと税を払えば、まあ大目に見てやるかもな」
そう言い残して、彼らは早々に引き上げていった。
俺たちが彼らを追い返すには、まだ力が足りない。
それよりも厄介なのは、領主本人が来るという話だ。
「ゼフィル様……どういたしましょう?」
ロブがやや焦り気味に尋ねる。
住民たちも心配そうな顔をしている。
確かに、ここまで順調に来られたのは領主や王都の干渉が弱かったおかげだ。
「まあ、領主が何を考えてるか知らねえが、もし高圧的に来るなら受けて立つしかないだろう。俺たちにはこの土地を守る責任があるしな」
俺の言葉に、住民たちは心配を隠せない。
だが、今さら逃げるわけにもいかないのだ。
ここまで築き上げたものを捨てるなんて、断じてごめんだ。
「ゼフィルさん、領主って……よほど権力があるんでしょうか?」
コークスが恐る恐る口を開く。
当然だ。貴族の力は大きく、下手をすれば村ごと焼き払われてもおかしくない時代だ。
「でも、こんな辺境の小さな村にそこまでするメリットがあるかな? もしかすると、俺たちの農地再生を自分のものにしようとしているのかもしれねえ」
スキルが欲しくて利用しようとする可能性は高い。
下手をすれば、俺を拉致して領地の開墾を強制させるなんて最悪のシナリオだってある。
「それでも、俺はここを守る。そのために、村の防備だって考えなくちゃな」
まだ十分とはいかないが、俺たちは少しずつ基盤を整えている。
石を積んで簡易の柵を作ったり、見張りを置いて不審者が来たらすぐわかるようにしたり。
これ以上、好き勝手に脅されるわけにはいかない。
「よし、みんなで協力して村を守る準備をしよう。俺のスキルで畑はどんどん拡大する。いざというときには、俺も剣を抜いて戦うつもりだ」
熱い決意を言葉にすると、住民たちも震える声ながら賛同してくれる。
俺たちの平和を乱す存在があるなら、相手が貴族だろうが領主だろうが、立ち向かうしかない。
「来るなら来い! この土地は俺たちのモノだ。誰にも渡してたまるかよ!」
そう高らかに宣言し、俺は限りなくこみ上げる闘志を燃やし始める。
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