第8話
あれから数日、コークスと二人でせっせと畑を耕し続けた。
スキルの力で土が活性化するのもあって、体力さえあればすごい速度で畑を広げられる。
とはいえ、二人だけでは限界があるし、作業も単調でしんどい。
「ゼフィルさん、さすがに手が痛くなってきました……」
「俺もだ。だが、ここで休んでばかりじゃ先に進めねえ。もうちょい踏ん張ろう」
そう励まし合いながら作業をしていた、まさにそのとき。
森のほうから複数の人影が近づいてくるのが見えた。
「またあの連中か? いや、違う……もっとボロボロな感じだ」
よく見ると、男女混じった数人が、疲れ切った様子でこちらを伺っていた。
服は薄汚れ、荷物もほとんど持っていない。
コークスと同じように、旅の果てに行き倒れ寸前といった風貌だ。
「おい、そこの人たち、大丈夫か? 具合悪そうだが」
俺が呼びかけると、その中の若い女性が力なく歩み寄ってきた。
「私たち……食べるものもなく、さまよっていたんです。もう足が限界で……」
「そうか。ここはまだ整備途中だけど、水ならあるし、少しなら食べ物もある」
まるで縋るように俺を見つめる彼ら。
見るに見かねて、俺はコークスと一緒に彼らを廃村の空き家へ案内した。
「あなたたちは……ここで暮らしてるんですか?」
「俺はゼフィル、こっちはコークス。王都から流れてきて、ここを再生してる最中さ」
ボロボロの彼らに水を渡しながら、簡単に事情を聞く。
やはり凶作や税の取り立てに苦しみ、行き場を失った人たちらしい。
中には子供もいて、泣きそうな表情でこちらを見上げている。
「もしよければ、一緒にやりませんか? 俺たちの畑で作物を育てて、ここで暮らす。そうすれば食べ物も確保できるようになるかもしれない」
その提案に、女性は目を見開いた。
ほかの仲間たちも、不安そうながら希望を感じているのがわかる。
「で、でも……私たちはただの村人で、貴族や領主からは何も保証されてなくて……」
「気にすんな。俺だって似たようなもんだ。それでもスキルのおかげで土地を蘇らせられる。みんなで力を合わせれば、きっと何とかなるさ」
俺の言葉に、彼らの表情が少し明るくなる。
王都で居場所がなかった俺も、ここに来て自分の力を信じられるようになった。
だからこそ、行き場のない彼らを放っておくわけにはいかない。
「まずはゆっくり休んで、体力を戻してから一緒に畑仕事をしよう。住む家も修理すれば、それなりに形になるはずだ」
「ありがとうございます……こんな辺境で救われるなんて思ってもみませんでした」
彼らは涙ながらに礼を言う。
ここでの生活がすぐに楽になるわけじゃないが、少しずつ再生していけば、この廃村だって住める場所に変わるだろう。
俺たちの仲間が増えれば、その可能性はますます広がる。
「よし、こうなりゃ気合い入れていくぞ! ここを俺たちの楽園にしてやろうぜ!」
俺が勢いよく宣言すると、コークスや新しく来た人々も、戸惑いながらも笑顔で応えてくれた。
こうして、孤独だった廃村に活気が戻り始めた。
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