第5話
コークスを廃村へ連れ帰った俺は、まず彼の体力を回復させようと、近くの小川で水を汲んでこまめに飲ませたり、森で見つけた木の実を食べさせたりした。
もちろん、十分とは言い難いが、何もないまま放置するよりは遥かにマシだ。
「助かる……ゼフィルさん、こんな俺を見捨てずにいてくれて」
「遠慮すんなって。俺だって一人じゃ寂しいし、力を貸してくれる仲間は大歓迎だ」
そう言って笑うと、彼も弱々しいながら笑みを返してくれた。
やがて少し体調が落ち着いたところで、俺は「農地再生」のスキルを彼に見せてみることにする。
かつて畑だった場所に足を運び、コークスの前で俺は土に手を当てる。
すると、あの暖かい光が土へ染み込み、固く乾燥していた土地が次第に柔らかく変化していく。
コークスはその様子を目の当たりにし、驚きの声を上げた。
「こ、こんな魔法が……本当に、土が息を吹き返してる!」
「すごいだろ? 俺も自分でびっくりしてるんだけどさ。これなら作物もバッチリ育つ……はずだ」
そう言いながらも、今は種や苗が少ししかない。
森で拾った野草の種を試しに撒いてみるが、すぐに収穫というわけにはいかないだろう。
でも、確実に芽が出るだろうという手応えがある。
「ゼフィルさん、もしもこの土地が豊かな畑になったら……」
「おう、困ってる人を呼び込んで、一緒に暮らそうぜ。ここなら誰も邪魔しねえし、王都の煩わしい連中もいない」
言葉に力を込めると、コークスは感動したように目を潤ませた。
王都や他の領地で食えずに苦しむ人が、まだまだたくさんいるはずだ。
そういう人たちを受け入れて、力を合わせて生きていく――それが俺の目指す未来だ。
「でも、まずは俺たちの生活基盤だ。食い物がなきゃ始まらねえ。だから、さっさと土地を耕して、種を撒いて……よし、やるぞ!」
俺がそう叫ぶと、コークスも力を振り絞ってクワを握ろうとする。
まだ体は本調子じゃなさそうだが、何かをしようって気持ちが表れているのは嬉しい。
「ゆっくりでいいさ。お前が無理しちまったら意味がないからな」
「はい、でも……俺、ずっとこんな生活しかしてこなかったから、働けるってだけでありがたいんです」
彼の瞳には希望が宿っていた。
俺はこの一瞬を見て、もう大丈夫だと確信する。
ここから始まる再生の物語は、決して俺一人だけの力じゃ成し得ない。
きっと、多くの仲間が必要なんだ。
「じゃあ、あれこれ考える前に、まずは一歩ずつだな。俺と一緒に、この土地を黄金に変えようぜ!」
俺はコークスの肩を叩き、明るく笑った。
それを合図に、再生の第一歩が踏み出される。
廃れた土地が蘇る瞬間、そしてそこに集まる人々が生み出す新しい未来。
なんだか胸が熱くなる。
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