第3話

 スキルを試しながら、さらに奥地へと足を進めていた俺は、ついに“人の住む場所”がまったく見当たらない辺境にたどり着いた。

 見渡す限り草も木もまばらで、ところどころ廃墟らしきものが見える。

 遠くに山が見えるが、切り立った岩山で登るのも大変そうだ。

 しかし不思議と、ここでスキルを活かしてみたいという気持ちが湧いてくる。


「ここまで荒れてるんなら、逆にやりがいあるってもんだろ」


 なんのあてもなく旅をしていた俺だが、やるからには思い切り挑戦したい。

 王都では価値がないとされたこんな土地でこそ、俺の能力が輝くんじゃないかと思ったんだ。


「だけど……ほんとに人はいねえのか?」


 周囲の廃村らしき建物を回ってみると、屋根が崩れ、壁は穴だらけ。

 人が住める状態ではない。

 それでも、かつて誰かが暮らしていた痕跡はそこかしこに残っている。

 土の壺、半ば崩れたテーブル、散乱した農具……。


「ここにも昔は住民がいたんだろうな。食べられなくなって、どこかへ逃げたのかもしれねえ」


 ちらりと見えた錆びたクワを拾い上げ、思わず苦笑する。

 農耕道具ひとつで大地を耕すのは大変だったろうに。

 けれど、俺には“農地再生”がある。

 このスキルなら、痩せた土地を肥沃に変えられるはずだ。


「俺が再びこの土地に人々を呼び戻してやる。荒野を黄金に変えてやるんだ」


 そう決意してクワを握ると、思わず力がみなぎってくる。

 誰もいない廃村に突如現れた“農地再生”スキル持ち……。

 おいおい、かなり面白い展開じゃねえか。


「よし、まずは試しにここを耕してみるか」


 かつて畑だったであろう場所を見つけ、俺はクワを振り下ろした。

 さすがに長期間放置されていた土はカチカチだが、そこに手を当ててスキルを使う。

 じわっと暖かい光が大地にしみ込み、土が柔らかく生き返るような感覚が伝わってきた。


「すげえ……こんな短時間で、もう耕しやすくなってるぞ」


 自分の力ながら感動を禁じ得ない。

 このまま畑を広げれば、作物を育てられるんじゃないか?

 思わず期待が膨らんで、どんどんスキルを使いたくなってくる。


「ふはは、これならいける! まずは食うものを作んなきゃ話にならねえ。ここに俺の“拠点”を作ろう」


 そう鼻息荒く言い放つと、俺は廃村の中心に立ち、ここを自分の領地だと勝手に宣言した。

 追い出されるように王都を飛び出した俺だが、今度は俺自身の意思で土地を育てていく。

 そんなワクワクが止まらない。

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