第4話 また目が合った
今日も山田君は美しい。陽の光に透ける柔らかい髪、陶磁器のようになめらかな白い肌、少し俯いた顔の高貴な感じに、伏せた目を覆う長いまつ毛。
ああ、もうずっと鑑賞していたい。いっそのことホルマリン漬けにして家に置いておくことはできないだろうか?
そう思っていたら、山田君がまたこちらを見た。
ドキ!
ほんの一瞬だったけど、確かに目が合ったよね? うん、目が合った! よっしゃー!
私は気を良くしてまた山田君の鑑賞に耽る。同じクラスでこんな美しいものを毎日堪能できるって、超ラッキー。
お家でも堪能できたらもっといいのに。二次元じゃなく、できたら三次元で。山田君がすっぽり入る円柱形のホルマリンの瓶の中でいつまでも若さと美しさを保ち続ける山田君を想像する。
思わず口元がニヤける。山田君がまたこっちを見た。
ドキッ!
やだ、また目が合った! もう、これ両思いの前兆じゃない?
目が覚めて思い出した。そうだった。山田君をホルマリン漬けにする妄想したことあったな。もちろん、妄想だけで実行に移そうなんてこれっぽっちも思わなかったけど。
ホルマリン漬けの妄想抱く妖怪女子にガン見され続けた山田君、さぞかし背筋が寒かったことだろう。
私は起き上がると簡単に身支度を整えて朝の準備に取りかかる。夫と陽斗のお弁当とみんなの朝ごはん。
夫は休日は自分から起きるのに、平日は私が起こさないと起きない。陽斗の幼稚園の支度もあるんだから、朝は早く起きてせめてそっちは手伝って欲しい。
でも、やらない。家族の世話はすべて私の仕事と決めつけているみたいだ。朝ごはんができる頃合いを見て子どもたちを起こしてくれるだけでも助かるのに。
私は小さくため息をついた。そして、夢の中の山田君の姿を思い出す。山田君は今ごろどうしているんだろう。関東の大学を出た後、そのまま関東の会社に就職したと、同窓会で誰かに聞いた。
そして、会社の上司の娘と結婚したって言っていた。まあ、あれだけの美貌があれば逆玉もあるよね。男子にも女子にも人気あったし。
それにしても、なぜ今になって山田君の夢を何度も見るんだろう。
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