第11話

 朝になり、宿の部屋で目を覚ました俺は、まだぼんやりとした頭で昨夜の“出来事”を思い返していた。

 真っ赤になった顔を隠すイリーナ、エリス、シェリルの姿が脳裏に焼き付く。

 けれど、後悔はまるでない。

 むしろ、こんなにも心が充実しているのは、前世を通じても初めてかもしれない。


「おはよう……。き、気分はどう?」


 頬をうっすら桜色に染めたシェリルが、寝乱れた髪をそっと整えながら声をかけてくる。


「ああ、おはよう……。えっと、みんなは?」


 部屋を見渡すと、エリスは窓辺で外を眺めていた。

 イリーナはベッドの端に腰掛け、やや気まずそうにこちらを見ている。

 どうやら、あの夜の情事が全くの夢ではなかったと再認識して、俺は少し照れてしまう。


「ごめんな……。いきなりこんなことになっちまって」


 そう呟くと、エリスがクッと笑う。


「何言ってんのよ。あたしの方こそ、いきなり押しかけて悪かったわ。でも、あんたが嫌じゃなかったなら……ま、いっか」


 その言葉に、俺は素直に首を横に振る。


「いや、嫌なわけないだろ。むしろ感謝してる。こんな俺を受け入れてくれてさ」


 すると、イリーナが恥ずかしげに目を伏せながら、ぽつりと呟いた。


「……私たち、ずっと探してたの。自分たちを“否定しない”で、でもしっかりと導いてくれる人を。あなたは、まさにそうだった。弁護士っていう職業も含めて、頼もしすぎるのよ」


「イリーナ……」


「エリスは強い剣士だけど、実は周りに引かれるぐらいのパワーがある。シェリルは穏やかだけど、自分を犠牲にしすぎちゃう傾向がある。私も、闇魔法使いってだけで差別されることが多くて……みんな、それぞれ孤独だった」


 その言葉を聞いて、エリスが目を伏せる。

 シェリルは少し泣きそうな顔でうなずいている。


「でも、あんたはそんな私たちをちゃんと“契約書”で支えてくれた。私たちの個性や能力に合わせて条文を作ってくれて、誰も傷つかないようにしてくれた。それって、すごく……優しいことだと思うのよ」


「だから、私たちはあなたに惹かれたのかもしれない……」


 イリーナが恥ずかしそうに視線をそらす。

 その表情は、昨夜までの妖艶さとはまた違った、純粋な女の子のような面影だった。


「そう言ってくれて、俺はすごく嬉しいよ。正直、こんなにも必要としてもらえるなんて、思ってなかったからな」


 俺はそっと三人を見渡す。

 この世界で得た仲間。

 彼女たちを守るためにも、俺はもっと強くならなくちゃいけない。

 法律だけじゃなく、戦いの力も必要かもしれない。


「俺は、これからもみんなを支える。だから、改めてよろしく頼む」


 その一言に、三人は照れながらも「うん」と頷いた。

 こうして俺たちは、単なるパーティメンバー以上の特別な絆で結ばれた……そんな気がした。

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