3. モノローグ――真一の最期

 プログラムアップロードが完了したのと同時に、真一の身体は限界を迎える。息が詰まるような痛みが波となって襲い、ついに力尽きて床に崩れ落ちた。視界の隅で香織(アンドロイド)がこちらへ手を伸ばしているのがわかるが、その手はもはやわずかに痙攣するだけで、動けないようだ。

 (香織……わかってるかな……オレが今、抱いてる気持ち……。お前がいなきゃ、オレは……とっくに死んだも同然だったんだ……。)

 頭の中で、かすかな声がこだまする。亡き香織とアンドロイドの香織が重なる映像が脳裏を回り、最後にクラゲの水槽の前で微笑んでいる姿へと収束していく。

 (もし来世なんてものがあるなら、今度こそ、二度と離さない……。でも、それは欲張りかな……。)

 真一の意識は遠のいていく。鼻孔には血の匂いと汗のにじむ感触が混じり、世界が音を失う。

 最期に、ふっと穏やかな青い光のイメージが目の裏を染める。まるであのクラゲの水槽の深淵のように、やさしく彼を包み込んでいた。

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