2. 最後のプログラム

 翌朝、真一は数十分おきに襲う激痛に耐えながら、研究所の端末へアクセスする。香織のAIコアを自作のコードで直接繋ぎ、“融合プログラム”の最終チェックに入った。世界中のアンドロイドを救うウイルスワクチンと、真一と香織の感情データを組み込んだ次世代エンジンのアップロードが、いよいよ完了しようとしている。

 呼吸が浅くなり、眩暈がする中、真一はターミナルにキーボードを叩き込み続ける。

「……あと少し……もう少しで完成だ……。香織……待ってろ……今度こそ救うから……」

 背中を走る激痛にうめき声を上げながらも、彼はコードを止めない。視界が暗転しそうになるたびに、亡き樋山香織の笑顔と、今の香織(アンドロイド)が楽しげに微笑んだ姿を頭に思い浮かべる。その二人がどれほど彼の人生にとって大切か、改めて突きつけられるような思いだ。

 やがてキーボードの最後のエンターキーを押す瞬間、真一は独白のように呟く。

「……愛してる、香織……オレは……二度とお前を失いたくなかった……」

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