第四章――思い出を重ねる旅
1. 無邪気なテーマパーク
さらに足を伸ばして、香織がよく「行きたい!」と口にしていたテーマパークへ向かった。入口には巨大なゲートと愛らしいキャラクターのオブジェが飾られ、そこかしこで子どもたちがはしゃいでいる。
ジェットコースターやメリーゴーランド、キャラクターショーのパレード……。真一は人混みが苦手で、これまで避けて通ってきた場所だったが、アンドロイドの香織は新鮮な世界にわくわくした表情を崩さない。
「すごい……! あれは何という乗り物ですか?」
「あれは……観覧車。結構高いんだぞ。まさか乗る気か?」
「もちろん、乗りたいです!」
香織(アンドロイド)ははしゃぎながら真一の腕を取る。その仕草が、亡き香織も体調がいい日には子どものように笑って遊園地を楽しんでいたことを思い起こさせる。真一はどこかこそばゆいような気持ちを抱きつつ、チケット売り場に向かう。
パレードの時間になると、色とりどりのフロートが行進し、キャラクターの着ぐるみが手を振っている。香織(アンドロイド)は両手を振り返し、楽しそうに写真を撮ろうとする。
「真一、あのキャラクターと一緒に撮りましょう!」
「え、いや……人が多いし」
「ダメです。せっかく来たんですから」
恥ずかしがりながらも、真一は渋々香織と並んで写真に収まる。その瞬間、ほんの少し頬を赤らめた香織が、控えめに真一の腕を抱いた。彼の胸はチクリと痛む――温かいような、切ないような、混ざり合った感情。
亡き香織もこんな笑顔を向けてくれたのだ。思い返していると、いつの間にかカメラのシャッターが切れ、小さくフラッシュが光る。香織(アンドロイド)の笑顔と、たどたどしくも笑みを浮かべる真一の姿が一枚の写真に焼き付いた。
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