2. 両親の計略
まもなく両親から通信が入る。モニターに大映しになった母親は、やや興奮気味だ。
「真一! アンタったら家の中が荒れ果ててるって聞いたわよ? だからハウスメイドアンドロイドを注文しておいたの。返品は受け付けないからね!」
父親も落ち着いた口調で告げる。
「トップエンジニアが自分の家にアンドロイド一体すら置かないのは、お客にも企業にも示しがつかない。親として情けないぞ。それに、お前の身体ももう無理がきかないだろう?」
一方的な物言いに、真一は苛立ちを隠せず頬を引きつらせた。しかし、モニター越しに母親がポツリと打ち明ける。
「Ac2は“custom”モデルよ。あの子――香織さんに似せたの。私たちは本当はあんなことしたくなかったけど……アンタなら、香織に似ている子なら大切に扱うんじゃないかと思って。ごめんね、香織さん……」
両親の思惑を知り、真一は怒りで奥歯を噛み締める。死者への冒涜じゃないか……。香織の姿を真似するなんて……。 しかし、目の前で所在なげに立つAc2の姿を見ると、無碍に追い返すことができない自分もいた。
結局、彼はAc2を家に迎え入れる。両親の“計略”に乗せられたのが悔しかったが、その容姿があまりに香織を想起させて、突き放せなかったのだ。
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