第一章――香織の面影を宿す訪問者

1. 荒れた部屋に届く贈り物

 それから時は流れ、真一は36歳になっていた。居住区の高層マンションの一室に住んでいるが、部屋は乱雑そのもので、仕事道具とコンビニ飯の袋が散乱している。窓は遮光ブラインドで閉ざされ、昼なお暗い。部屋の中央に設置された複数のモニターが、AI関連のコードやデータを映し出していた。

 そんなある午後のこと。玄関のインターフォンが鳴り響き、真一は煩わしそうに眉をひそめた。モニター越しに見えたのは、配達業者と思しき人物と――切れ長の美しい瞳をもつ女性型のアンドロイド。

「ハウスメイドアンドロイド、Ac2です。真壁様のお宅にお届けするようご依頼を受けました」

 透き通るような声。アンドロイド特有の抑揚の薄い話し方だが、ただ者ではない雰囲気が漂っている。

 真一は応対しながら無言のまま凝視する。このアンドロイド……どこか、香織に似ている……?

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