第3話

どうにもこうにも落ち付かない。

確かにこの場所に鞄はあった。

考え方を変えてみよう。

私が珈琲を入れに行ったときには

もうなかったというていにしよう。

つまり、座席にしてトイレから

一番遠いこの席だ。もしかしたら一時間前、

私が手洗いに言っている際には

もうなかったものとする。

 しかしながらどうであろうか?

そんな考えを重ねていくうちにまた

不安要素が増えてきた。

 そんな馬鹿なことあるわけがない。

私は朝から晩までずっとこの場所にいた。

正確な時間は覚えていないが、

この場所にいた。

 それでも店員は嫌な顔をせずに

(とはいいがたい)対応してくれていた。

 いやまてよ。私は何時からこの場所にいた?え?つまりどういうことだ、

私の中の今日という一日だけが

削り取られているような奇妙な感覚だ。

 足元に何かがある、何か大きいもの。

これはなんだ?足でそれに障る。

大きいものだ。

 恐る恐るそれを手で触る。

もしかすると、もしかするかもしれない。

私の鞄だ。

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