『九重重蔵』の場合

うむ、晴れやかな天気だ。

気分も清々しい。

心地よい。

筋肉が生きている証拠だな。

おっと、あまりの気持ちよさに我を忘れるところだった。

いまは山登りの最中。

男の俺の、腕の見せ所というやつだ。

まぁこの程度では汗一つかかないがな。


ふむ、十方とおかたはやや後ろか。

わざと後ろを歩いているんだな。

筋肉の使い方を分かっているじゃないか。

前は俺、後は十方。

熱い男同士が背中を預ける構図とほぼ同じということだ。

2対の龍の物語はいまここより始まるというわけだ。

そうだ、お茶に誘うならば今この時をもって他になしだな。

大自然がいい演出を出している。

さぁ、十方、俺の手を取るがいい。


「あ〜れ〜」


「おっと、大丈夫か?」


手を取ってくれる相手が違ったが、まぁいい。

どうだ?十方?

俺の筋肉は素晴らしいだろう?

触りたいだろう?

いいぞ、存分に触ってくれ。







おっと、筋肉美を見せびらかしすぎて誘うことを忘れておったわ。

だが問題ない。

次は、漢の飯の時間。

流れ的にお茶の話は変じゃない。

どうだ?十方?

………なんだって?その日は空いてない?

いや、別に休日じゃなくても学校終わりでもいいのだぞ、俺は。

………もっと無理?

ふむ、わかった。

ならば、行ける日を連絡してほしい。

それならば、どうだ?

………よし、連絡を待っているぞ。

俺の認める男よ。






ふっ、気分がいいな。

勝ち組とは、こういうことだ。

いつかはまだ決まっていないが、誘いの連絡は来るだろう。

いや間違いなく近日中にくる。

俺の予測は99%当たるからな。

くんくん、ほう、これは…良き知らせが舞い込んできそうじゃないか。


「何か、困り事か?」


「その声は九重ここのえ!ちょうどよかったっす。十方の事教えてくれっす」


「ほう、もしや狙ってるのか?」


「うちは違うっすよ。調べてるだけっす、情報が欲しいんす」


「いいだろう。交換条件だ。仕入れたネタは俺にも報告してくれよな」


よし、交渉成立だな。

やはり、俺の予測は当たったな。

だがしかし、『うちは違う』ということは、他に誰かが十方のことを狙っているのかもしれんな。

俺の認める男なわけだから仕方ないことだが、もう少し視野を広げる必要があるやもしれんな。

だが、その思惑は叶うことはない。

なぜなら俺達は熱い絆で結ばれているからな!
















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九重重蔵がクラスの人の名を言うときは、苗字のみです。

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