『六道優希』の場合

林間学校、今日は学校のイベント。

課外活動だからバスケの練習はできない。

兄貴はいつもどおり学校に行けるから羨ましい。

まぁ、山登りは体力づくりに丁度いいから、真面目に行くけどね。




山の中腹あたりまで歩いてきたけど、頂上まではまだ距離があるみたい。

本当は、全力ダッシュしたいところだけど、この混雑じゃあ無理かな。

十方とおかたは、前のグループにいるのか。

周りにも人がいっぱいいる。

一式いっしきが、さっきからコケそうになってるけど、あの靴じゃあ、そうなるよ。

なんであれをチョイスしたのか、お嬢様の考えることは分かんないな。

それに、五島ごとうの反復横跳びみたいな動き、この山の中ではどうかと思う。

文化系女子と思ってたけど、案外動けるのかも。

バスケ部に誘うのはありかもしれない。

私のすぐ後ろは、七谷ななや八釘やくぎ

八釘は、ずっと七谷に話しかけてる。

ピクニック気分もいいところ。

できれば、もう少し静かにしてもらいたいな。

私は、トレーニングの一環でもあるんだから、迷惑なんだよね。


「ねぇ、もう少し静かにしてくれない?気が散るんだけど」


「はぁ、それ俺に言ってんのか?兄の劣化版でしかない奴がよぉ、喧嘩売ってんのか?」


「タイマンっすか?うちは、らぶぃ応援っすよ」



はぁ、もういい。

こういう輩は相手にしない方がいい。

ヤンキーは面倒くさい。

兄貴の名前出さないでよね。

ああイライラする。

この人達は無視しよう。

下山時も傍にいないようにしよう。





窮屈な時間からはおさらばできた。

やっと開放感ある時間がやってきた。

まずは水が必要かな。

十方がいるじゃん。

ちょうどいい。

バスケの話できるかなっとっとっと。

危ない危ない。

四手してが突っ込んできたけど、そのくらいじゃあ、私は倒れないよ。

バスケ部エースの体幹を甘く見られちゃ困るね。

十方…えっ、なんだって?兄貴?

なんで兄貴の話をしなくちゃいけないのさ。

比べないでよ。

私のことを聞いてよ。






こんなことなら、来なかったのに。

家でバスケの練習していたかったな。

それじゃあまた兄貴と比べられちゃうか。

でもやる気がでないなぁ。

正直いまはダンスなんてどうでもいい。

さっきだって、十方と話すチャンスあったのに、上手く誘えなかったし。

兄貴の話を聞かれた時のことを思いだすと、どうしても踏み切れなかったな。

十方が何か言ってたけど、聞こえなかったし、ずっとコクコクと頷いただけだった。

失敗だなぁ。



切り替えよう。

今回は諦める。

でも、次は成功させる。

5月の林間学校の次は、6月の体育祭。

今度こそスリーポイントを決める。

なんてたって、私はバスケ部のエースなんだから。
















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六道優希がクラスの人の名を言うときは、苗字です。


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