『二階堂扇』の場合

今日は林間学校の日です。

お昼のハイキングのあとは、飯ごう炊飯、夜はキャンプファイヤーです。


ハイキングなんて久しぶりです。

小学校の頃に、涼くんと一緒に近くの山を登った時以来です。

あの時は体力なくて、でも涼くんはどんどん進んでいくので、頂上まで追いつきませんでした。


でも今日は違います。

涼くんと一緒に歩いています。

隣は私です。

誰にも譲る気はありません。


水分補給も大事です。

家を出た時に、涼くんの水筒は私が預かりました。

私のタイミングで、注いで渡しています。


それにしても、さっきから委員長がこっちを見てきます。

何かしたのでしょうか。

思い当たる節がありません。


「二階堂さん、そんな近くだと十方くんが歩きにくいわよ。山登りなんだから、もう少し離れて歩いたらどうかしら?」


「麗華さん、いえ委員長、お気遣いなく。これも幼なじみの役目ですから」


横を歩くな?

意味が分かりません。

私は幼なじみなんです。

これは幼なじみの特権です。




やっと飯ごうの時間です。

昼のハイキングは疲れました。

幼なじみとして、涼くんを支えました。

でも私にとっては、ここからがメインです。

料理は大得意です。

飯ごう炊飯もお任せください。

毎日料理してるんだがら、お茶の子さいさいです。

花嫁修業はバッチリです。


最初の一口目は、涼くんにフーフーして食べてもらいます。

幼なじみの特権です、はい。

あ、涼くんがすぐ近くまで来てくれました。

って、ない!

食べてもらおうとした分がありません!

どうして……………って、芽依めいさん!


「なんで、食べてるんですか!?」


「んな!私の残像を見破るなんて!貴方も里のものなのね!」



意味が分かりません。

里のものって、里芋のことでしょうか。

そんな具材無いですよ。


そういえば、涼くんは…って、なんで愛美らぶみさんと飯ごうをつつき合っているんですか。

どういうことですか?

愛美さんはダークフォースだったんですね。

要注意しなければなりません。




締めはキャンプファイヤーです。

でも私は踊りませんから、あの輪には入りません。

涼くん以外の人と手を握るなんてまっぴらごめんですから。

今日は監視に徹します。

愛美さんのようなダークフォースがいるかもしれません。

ほら、今度は後ろに白い影が!

退治しないと!

睨んで、威嚇して、離れさせなければ!

最後まで、チェック!チェック!!チェックです!!!




ふう、なんとか1日が終わりました。

依然、私の優位性は変わりません。

ですが、今度からはちゃんと用心します。

対策します。

涼くんの隣は絶対私なんですから。

















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二階堂扇がクラスの人の名を言うときは、名前+さん付けです。男性の場合は、苗字+くん付け。心の中でも同じです。

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